ネタニヤフ氏は爆撃を再開した後、「始まりに過ぎない」と攻撃を正当化した。実際にはその裏で極右の「ユダヤの力」に秋波を送った。
ベングビール氏は攻撃再開からわずか数時間後、「政権に戻るのはハマス壊滅に向けた一歩だ」と述べ、復帰を表明した。筋書き通りの復帰劇だった。
これで、首相は予算案の成立に必要な過半数を確保した。検事総長が復帰に反対したが、ネタニヤフ氏は無視して地上作戦の開始を発表、ガザを南北に分断するネツァリム回廊に地上部隊を配備した。
トランプの手法をお手本に
こうしたネタニヤフ氏の強引な手法は米国のトランプ大統領のやり方をお手本にしているのではないかとの声がもっぱらだ。トランプ氏は実業家イーロン・マスク氏らを使って政府の解体を進めているが、ネタニヤフ氏も軍と諜報機関を自分の好みに合うように造り替えつつあるようだ。
トランプ氏は国防総省にFOXニュースの解説者だったヘグセス氏を長官として送り込み、制服組のトップのブラウン統合参謀本部議長を解任した。ヘグセス長官は海軍のフランチェッティ作戦部長らを解任した。大統領が交代しても現場の将軍らは残るケースが多く、今回の人事は極めて異例だ。
ネタニヤフ氏もハレビ統合参謀本部議長を事実上解任し、ザミール将軍に交代させた。同氏はネタニヤフ氏の軍への「特使」と呼ばれており、ヘグセス氏のような存在だ。イスラエル軍の顔として人気が高かったハガリ報道官も解任、ガザを統括する南部軍の司令官にアソル将軍を指名した。
しかし、こうした幹部のクビをすげ変えてもうまくいくとは限らない。イスラエルでは予備役の兵役拒否の動きが拡大しており、このまま戦線が広がれば、補充が間に合わなくなる恐れが出ている。ネタニヤフ氏にとっては頭の痛いところだ。