レアメタルを必要としない太陽電池
PSCは、従来の太陽電池と異なりレアメタルを必要としない点でも注目されている。主要な材料はヨウ化鉛やメチルアンモニウムなど日本で入手しやすい素材である。一方、従来型の太陽電池ではインジウムやガリウム、セレンといったレアメタルが使用される。PSCはレアメタルを使用しないことで、コスト削減や供給安定性を実現している。
PSCの主なメリットには、低コスト化、高い発電効率、軽量・柔軟性、環境負荷の低減が挙げられる。製造プロセスがシリコン系太陽電池よりも簡素で、低温処理が可能なため、エネルギーコストを削減できる。材料使用量もシリコン系の1/20と少なく、これがコスト削減に寄与している。また、研究レベルではシリコン系と同等以上の変換効率(20%以上)を達成しており、タンデム型(PSC+シリコン)ではさらに効率向上が可能である。PSCはフィルム状に製造でき、厚さはシリコン系の1/100と薄く、曲げ加工ができるため、ビルの壁面や自動車のボディーなど、従来設置困難な場所にも適用できる。さらに、低温製造によりCO2排出量が少なく、国産原料(ヨウ素など)を活用できるため供給安定性も高い。
耐久性を向上させるためのポイント
しかし、PSCにはデメリットも存在する。その中でも耐久性と不安定性は大きな課題である。PSCの長期安定性を改善するための主要な手法として、材料改質技術、封止・コーティング技術、製造プロセス革新、構造設計が挙げられる。材料改質技術には、ホール輸送層への新規添加剤の採用や前駆体材料に塩化アンモニウムを混合する方法があり、これにより性能劣化を抑制することができる。
封止・コーティング技術では、湿気や酸素を遮断する保護膜の開発が進められており、これによって耐久性が向上する。製造プロセス革新としては、全自動製造システムの導入による人為誤差の排除や、塗布工程の最適化が行われている。構造設計においても、熱拡散防止構造や鉛フリー材料の採用が進められ、環境耐性が強化されている。現在、NEDOプロジェクトなどで実用化に向けた耐久性基準の策定も進行中である。
さらに、PSCの設置自由度は革新的な活用を可能にしている。曲面や複雑形状への設置が可能であり、従来のガラス基板型では不可能な曲率半径10cm以下の曲面に対応できる。これにより、体育館の軽量屋根や老朽化した建物、工場・倉庫の屋根など、シリコン系では断念された場所でも活用が期待される。厚さ1mmのフィルム型は窓ガラスや外壁に貼付可能であり、建材と視覚的に融合することができる。高層ビルの壁面全体を発電面に転換することも可能であり、移動体や小型機器への適用も進んでいる。ドローンやEVの車体、バッグや衣類などの可動部にも利用でき、IoT機器の自立電源としての活用も検討されている。
経済産業省の試算によれば、これまで未利用だった建物の表面積の30%以上を発電に活用できるとされている。PSCの導入が進むことで、エネルギーの自給率向上が期待され、持続可能なエネルギー社会の実現に寄与することがなく期待されている。
最後に、PSCは日本の技術と資源を活かして、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた重要な役割を果たすことが期待されている。これまでの研究と実用化の進展を通じて、より多くの人々がクリーンなエネルギーを利用できる未来が訪れることを心から願っている。PSCは、今後のエネルギー政策において重要な役割を果たすと考えられ、国際的なリーダーシップを発揮する可能性を秘めている。