日米情報共有への課題
その一つは、リアルタイムによる情報共有の問題だ。海・空自衛隊は、米国が開発し、同盟国間で共用されている「リンク16」など人工衛星を中継した戦術データリンクを使用しているため支障はないが、課題は陸上自衛隊だ。
2016年以降、米軍や海空自と連携して艦艇を撃破する陸自の対艦ミサイル部隊には、戦術データリンク機能が導入されはじめているが、問題はそれ以外の陸自の現場部隊だ。どうやって情報を伝達しているかといえば、ドローンや目視で攻撃目標を確認した隊員が無線で部隊に連絡し、それを聞き取った隊員がパソコンに打ち込み、情報を送信するという原始的な手法が続けられている。これでは日米すべての部隊が、リアルタイムで情報を共有することはできない。
日米共同演習であっても、作戦中枢の指揮所には大きな液晶モニターが置かれ、刻々と変化する戦況を映し出す「共通の作戦画面」(Common Operating Picture:COP)に向かって、自衛隊と米軍の幹部たちが作戦を立案、指揮している。だがその前提は、情報をリアルタイムで共有できることだ。訓練なら許容範囲であっても、実際の作戦で秒単位の情報の遅れは致命的な結果をもたらしかねない。
電波法の見直しは必至
ではどうしたらいいのか――。陸自の部隊で使用する通信端末(無線機など)からデータや動画などを瞬時に送信できれば解決すると思われるが、それができないのは「総務省が自衛隊に割り当てている電波の周波数帯に問題がある」と陸自のOB幹部は指摘する。
問題は通信端末にとどまらない。ウクライナ戦争でゲームチェンジャーと評された小型無人機(ドローン)の運用にも支障を来すとみられている。
総務省は官民問わず国内のドローンにはパソコンやスマホで使われるWi-FiやBluetoothなどと同じ2.4ギガヘルツ(GHz)帯を割り当てているが、これには武力攻撃事態や存立危機事態といった日本有事においても例外規定がないという問題がある。政府はこうした現状を認識したうえで、有事において自衛隊が使用する機材を電波法の適用から除外した場合の影響などを含めて急ぎ検討する必要がある。
