活発化する同志国との共同訓練
最新の『防衛白書』(令和6年版)に「日米に第三国を交えた多国間共同訓練」という項目があるように、自衛隊は米軍に加え、欧州各国や豪州などの同志国を交えた共同訓練を活発化させている。今年2月には、中国が領有を主張する南シナ海を念頭に、日米仏の海軍艦艇が集結した共同訓練が実施され、今夏には空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を中核とする英空母打撃群の日本寄港も予定されている。
英仏など北大西洋条約機構(NATO)加盟国のインド太平洋地域への進出は、中国を安全保障上の懸念、脅威と認識するNATOの戦略概念(2022年採択)に基づく行動であり、日本も22年12月に改定した「国家安全保障戦略」で、欧州など同志国との間で抑止力を強化するとしており、今後、訓練はより実戦的な内容に引き上げられることは確実だ。
米軍不在時の指揮システムがない
そこで問題となるのは、作戦を遂行する上での課題だ。自衛隊は同志国であっても、共同作戦は米軍と一緒の環境下でしか想定しておらず、日英や日仏、日豪といった米軍不在時に2国間で運用できる指揮システム(Command:指揮 Control:統制 Intelligence:情報)のインフラはない。このため昨年9月、仏陸軍と陸自とのゲリラ戦を想定した中隊規模の訓練では、日仏の部隊間の連絡は秘匿のない通信(ボイス)で行われたという。
しかし今、米国のトランプ大統領が模索するウクライナ戦争の停戦を巡って、英仏独など欧州各国には米国が信頼できなくなったとの認識も広がっている。そうした状況でも、中国に対する抑止力として、欧州各国のインド太平洋地域への進出を途切れさせないためには、自衛隊は新たな指揮システムの構築など、米軍が不在であっても作戦行動を可能とする備えを考えなければならない。
トランプ大統領の不満解消への知恵
ここまでは自衛隊の作戦行動における諸課題を挙げたが、日米の連携を阻害する要因として無視できないのは、同盟に懐疑的なトランプ大統領の対日批判への対応だ。
「我々は日本を守らなければならないが、日本は我々を守る必要がない」との不満を再び口にしたトランプ大統領に対し、石破首相は3月7日の参院予算委員会で「日本は米国に基地を提供する義務を負っている」と述べ、一方的に守ってもらっている関係ではないと強調したが、発言はあまりにも陳腐で、不勉強だと言っていい。
トランプ氏は1期目も同じ不満を何度も述べている。しかし、それに対し当時の安倍晋三首相は、集団的自衛権を限定行使できる安全保障関連法を成立させ、トランプ氏に米軍を自衛隊が防護することを示し、理解を得ている。
これに倣って石破首相が説明すべきは、日本は今、米国とタッグを組んで極超音速ミサイルを迎撃するための新型ミサイルを開発中であり、完成すれば米国の安全は飛躍的に高まるということではないのか。
