日米共同開発が進む新型迎撃ミサイルとは
すでに、中国とロシア、北朝鮮は、音速の5倍(マッハ5)以上で低空を飛行する極超音速滑空弾(Hypersonic Glide Vehicle:HGV)を開発、実戦配備を進めている。今のミサイル防衛システムでは探知や迎撃は困難で、大きな脅威となる日米両政府は23年8月、迎撃ミサイル(Glide Phase Interceptor:GPI)の共同開発で合意し、翌24年8月には、HGVを探知、追尾するために多数の小型衛星を連携させる「衛星コンステレーション」の構築でも両国が協力することを確認している。
日米が迎撃ミサイルを共同開発するのは、イージス艦から発射される「SM3ブロック2A」以来2例目で、2030年代の半ばまでにGPIの配備が始まれば、日本の安全はもとより米国の安全も飛躍的に高まることを、政府はトランプ大統領に説明し、理解を得る必要がある。「基地を提供している」などと言っている場合ではない。
日米連携の隠し玉はグリーンランド
中露や北朝鮮のミサイル脅威に関連すれば、政府はデンマーク自治領グリーンランド島の重要性を認識する必要がある。同島には米宇宙軍ピツフィク基地があり、核を含めた各種ミサイルの発射から追尾までの情報を集約する最前線の施設だ。仮にこの島に「一帯一路」のように中国資本が投じられればどうなるか。
トランプ大統領の「グリーンランド購入」発言は多くの反発を招いているが、その真意は米国防総省が24年にまとめた北極戦略で、北極圏を巡る中露の協力強化への懸念であるはずだ。であるならば、これ以上の反発を生じさせないためにも、政府はデンマーク政府や同島の議会に対し、島の重要性を説き、NATOや多くの同志国と協力し、島を豊かにすると同時に、平穏を維持する手立てを講じる必要がある。トランプ大統領も「購入」を封印し、歓迎するだろう。
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自衛隊の運用を円滑にし、米軍との連携強化の礎となる統合作戦司令部の発足を機に、政府は自衛隊が抱える運用上の課題を直視し、米国や同志国との連携を阻害する要因を洗い出す必要がある。平和を守り抜く知恵と覚悟が、今ほど求められている時はない。
