2025年4月23日(水)

BBC News

2025年4月5日

米証券取引所の職員が複数のモニターに向かい取引をしている様子

ナタリー・シャーマン記者(ニューヨーク)

中国は4日、トランプ米政権による関税への対抗措置として、アメリカからの全輸入品に34%の追加関税を10日から課すと発表した。これを受け、欧米の株式市場の混乱が深まった。一連の関税で、長期的な貿易戦争と世界経済への悪影響の可能性が高まっている。

この日、アメリカの主要な株価指数はすべて5%超下落した。

中国は報復関税に加え、主要鉱物の輸出を制限し、複数のアメリカ企業をブラックリストに追加した。トランプ大統領の行動は強圧的な「いじめ」だと非難し、世界貿易機関(WTO)の規則に「深刻に違反する」ものだとしている。

ドナルド・トランプ大統領は、世界貿易秩序の再構築を誓っており、市場のショックに対する懸念を一蹴し、アメリカの労働市場の強さを強調した。

トランプ大統領はソーシャルメディアで支持者らに「耐え抜け」と呼びかけた。「我々は負けるわけにはいかない」。

トランプ氏が全ての国からの輸入品に対して新たに10%の関税を発表して以来、世界の株式市場は数兆ドル相当の価値を失った。中国、欧州連合(EU)、ヴェトナムなどの主要な貿易相手国を含む数十カ国の製品が、さらに高い税率の「相互関税」に直面している。

市場アナリストらによると、こうした措置の一部は早ければ5日に発効する予定。アメリカにとっては、1968年以来最大の税率引き上げとなる。

専門家らは、一連の措置が貿易の縮小を招くと予測しており、多くの国が景気後退に陥る可能性があると警告している。

各地の市場で株価下落、間接的な影響も拡大

株価下落は、アジアの納品業者に大きく依存している米アップルやナイキといった企業から始まった。しかし4日には、消費財、医療、公益事業など、通常は関税の直接的な影響を受けない分野でも下落が広がった。

この日、アメリカの大手企業500社を対象とするS&P500種はほぼ6%下がり、2020年以降で最低の1週間となった。

ダウ工業株平均は5.5%下がり、2月の最高値から10%の落ち込みとなった。ハイテク株比率が高いナスダックは5.8%下落。同指数は昨年12月からおよそ5分の1の価値を失っており、「ベア・マーケット(弱気相場)」に突入した。

イギリスでもFTSE100種が4.9%下落し、1日での落ち込みとしては2020年3月27日以来の最大の下落となった。ヨーロッパでは、フランスのCAC40種が4.3%、ドイツのDAXほぼ5%、それぞれ下がった。

アジアでも続落し、日経平均株価が2.7%超下落した。石破茂首相は、この状況を「国家的危機」と呼んだ。

国際的な原油価格指標のブレント原油も、ほぼ6%下落した。

一方、市場では住宅関連企業が明るい兆しを見せた。混乱が住宅ローンの金利低下をもたらし、アメリカの住宅市場を助けるとの期待が高まったためだ。

ナイキや他の衣料品小売業者の株価も、3日に大きく下落した後、4日には一部回復した。特に、トランプ氏がベトナムの指導者と「非常に生産的な電話会談」を行ったと述べたことが、交渉成立への期待を高めた。

カンボジアも関税引き下げを提案し、アメリカに交渉を求める書簡を送った。

しかし、他の分野は依然として厳しい状況にとどまった。

中国に製造を大きく依存しているアップルの株価は、4日に7%以上落ち込んだ。同社の市場価値は、2日以来およそ15%目減りしている。

ホワイトハウスは交渉意欲について矛盾したシグナルを発しているが、各国はなお取引を期待しているようだ。

EUも、アメリカへの報復措置を計画している。欧州委員会のマロシュ・シェフチョヴィッチ貿易担当委員は4日、米当局と2時間にわたる「率直な」意見交換を行ったと述べ、貿易関係には「新しいアプローチ」が必要だとソーシャルメディアに書き込んだ。

「EUは意義のある交渉にコミットしているが、同時に我々の利益を守る準備もできている」、「引き続き連絡を取り合っていく」と、シェフチョヴィッチ委員は述べた。

共和党からも「莫大なリスク」の声

トランプ氏の動きは、昨年の大統領選での約束と一致している。

しかし、関税の対象範囲は一部のアナリストが予想していたよりも広く、今週には、2020年の新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的な閉鎖やその他の混乱以来の最悪の結果を株式市場にもたらした。

米投資会社ホライズン・インベストメンツの調査・定量戦略責任者を務めるマイク・ディクソン氏は、「率直に言って、地合いはかなり悪いし、そうなって当然だ」と指摘。トランプ氏の関税の影響を把握するには数週間かかると警告した。

米金融JPモルガンは投資家へのメモで、今年の世界経済が不況に陥る確率を、以前の予想の40%から60%に引き上げたと発表。関税の衝撃により、今年のアメリカの経済成長率が2パーセントポイント下がる可能性があると指摘した。

一方、アメリカ株価はここ数年にかけて驚くほど上昇していたのだとして、その後のことだけに今回の関税による損失を軽視する投資家もいる。

米テネシー州に拠点を置く資産管理会社「キャップウェルス」のティム・パリアラ最高経営責任者(CEO)は、「市場のこうした変動は、上昇よりも下降の速度がはるかに速いため、激しくなっている」と述べた。

パリアラCEOは、ホワイトハウスが世界貿易の「大きなリセット」を試みており、それは必要な努力だと述べた。

「私がこの仕事について以来、大勢がずっと貿易不均衡を話題にしてきたが、何も起こらなかった。だから何かが起こる必要がある」、「まったく不均衡になってしまったいくつかの関係を、是正しようとしている」のだと、同氏は説明した。

米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は4日、最新データがアメリカの3月雇用の強さを示していると指摘し、経済は「堅調」だと考えていると述べた。

一方で、不確実性が高まっていることも認め、「関税が予想以上に高く、ほとんどの予測者が予測したよりも高かった」と述べた。そのうえで、経済成長が鈍化し、物価が上昇する可能性があると警告した。

混乱が続く中、ホワイトハウスのトランプ氏支持者からも、関税を批判する声が出始めている。

テッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス州選出)はポッドキャストで、トランプ氏の関税がアメリカに利益をもたらす可能性があるとしながらも、「莫大なリスク」があると警告した。

「もし今から30日後、60日後、90日後に、アメリカの関税が大々的に課され、世界中の他の国々でもアメリカ製品に大々的な関税が課されるシナリオになったら、それはひどいてんまつだ」と、クルーズ議員は述べた。

(英語記事 Worst week for US stocks since Covid crash as China hits back on tariffs

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cly17rzgelpo


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