
米政府高官らがイエメン空爆の機密情報を民間通信アプリ「シグナル」のチャットでジャーナリストと共有していた問題で、米英のメディアは6日、米政府の内部調査に関する情報をもとに、高官の不手際によってジャーナリストがチャットのグループに加えられていたと報じた。
BBCがアメリカで提携する米CBSニュースと、英紙ガーディアンはそれぞれ、複数の情報筋の話として、マイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)がチャットグループに国家安全保障会議(NSC)のブライアン・ヒューズ報道官を加えようとしたところ、意図せず米誌アトランティックのジェフリー・ゴールドバーグ編集長を加えたのだと報道した。
内部調査では、ウォルツ氏の携帯電話に、ヒューズ氏の代替連絡先として誤ってゴールドバーグ氏の電話番号が保存されていたことがわかったという。
この問題は、ゴールドバーグ氏がイエメン空爆という機密性の高い情報を攻撃前に入手していたことを、3月24日に記事にして発覚。国防総省の監察部門が、チャットに参加していたピート・ヘグセス国防長官や「シグナル」の使用について調査を進めている。
内部調査の結果はまだ公表されていない。BBCはホワイトハウスとアトランティックにコメントを求めている。
「『マトリックス』じゃないんだから」
ウォルツ氏は3月、米FOXニュースでゴールドバーグ氏について、「この男のことは100%知らない」と説明。別の人物をチャットに参加させる予定だったと述べた。
司会者から、どうしてゴールドバーグ氏の電話番号が追加されたのか問われると、「誰かの連絡先情報をもっていると、どういうわけか(中略)吸い込まれてしまう。吸い込まれるんだ」と答えた。
一方、ゴールドバーグ氏はこれまで、この説明は正しくないと反論。ウォルツ氏とは何度か会ったことがあると主張している。
ゴールドバーグ氏は米NBC番組「ミート・ザ・プレス」に出演した際には、「(SF映画の)『マトリックス』じゃないんだ。電話番号が別の電話に吸い込まれることなんかない」、「私の電話番号が彼の電話に入っていたのは、私の電話番号が彼の電話に入っているからだ」と述べた。
昨秋のコメント要請で混乱か
今回、複数の情報筋がCBSに語ったところでは、最初の間違いは、問題となったチャットでのやりとりの数カ月前に起きたという。
ゴールドバーグ氏は2024年10月に取材の一環として、当時のドナルド・トランプ大統領候補の陣営にメールでコメントを求めた。陣営に対応を任されたヒューズ氏は、ゴールドバーグ氏のコメント要請と同氏の連絡先を、ウォルツ氏にメッセージで送ったのだという。
メッセージを受けとったウォルツ氏の携帯電話は、新しい電話番号情報を保存するか同氏に尋ね、同氏はそれを承認した。消息筋によると、このとき携帯電話は、ゴールドバーグ氏の電話番号を、ヒューズ氏の名前で保存したという。
そして今年3月、ウォルツ氏は「シグナル」のグループチャットを開始しようとして、ヒューズ氏を追加したと思い込んだという。ところが、実際に追加されたのはゴールドバーグ氏だった。
この問題が明らかになったあと、ウォルツ氏は「私がグループを作った」、「恥ずかしい」とFOXニュースで述べ、責任を認めている。
今回の問題で連邦議会は、調査を求めるとともに、公聴会でチャット参加者らを質問責めにした。
トランプ氏はこの問題を「調べる」と述べている。
今回報じられた内容が、トランプ氏の言う調査の結果なのかは定かではない。
(英語記事 Top US official meant to add spokesman to Houthi Signal chat - reports)