2024年4月20日(土)

ヒットメーカーの舞台裏

2014年4月18日

 携帯ゲーム機用の「パズドラZ」(以下「Z」)は、課金方式ではなく4400円(パッケージ版。消費税率5%時)の売り切りソフトだ。スマホ版のヒットを受けて投入という順序になったが、実はスマホ版の開発初期からゲーム機用も並行して企画が進められていた。スマホ用のパズドラは画面が2分割され、上はゲーム画面、下は碁盤目状のパズル画面となっている。開発者や経営陣は2画面式のニンテンドー3DS向けに展開しやすいと着目していたそうだ。「Z」の実際の開発は、スマホ版を複数のOS(基本ソフト)に対応させる作業が終わった12年秋から始まった。根っこは同じでも、ゲーム機用は別物だ。狙う顧客層もスマホ版のように中高生や大人ではなく、家庭用ゲーム機の中心ユーザーである小学生となる。

実は初めてだった3DS向けソフト

 プロモーションを担当したセールス&マーケティング部コンシューマ課の戸津幸恵(34歳)によると、「長く楽しめるゲーム機用としてストーリー性をもたせ、かつ親御さんにも安心いただけるよう追加課金がないソフトにした」のが、大きく異なる点だという。ストーリーは悪の組織によってバラバラにされた世界を、プレイヤーがドラゴンを操る主人公となって取り戻す旅に出るという設定となっている。

 ニンテンドー3DSの特徴である通信機能を生かし、友だちや家族と育てたモンスターをトレードしたり、友だちに助っ人参戦してもらったりする機能も付けた。インターネット経由で追加のゲームステージを無料配信するなど、長く楽しんでもらう仕掛けも工夫している。ミリオンセラーにはなったが、プロモーションに着手した13年初めの段階ではどう売り込んでいくのか、「手探り状態だった」(戸津)という。ガンホーはそれまでも家庭用ゲーム機向けのソフトを手掛けたことはあったが、大きな実績はなかった。さらに、3DS向けは初めてだし、ターゲットとする小学校高学年向けの製品投入も初めてだった。

 一方で同年3月には、快進撃を続けるスマホ版の累計ダウンロードが1000万件を突破、「Z」のチームは社内で「日を追うごとにプレッシャーの高まりを実感する」(同)状況になっていった。戸津たちは「基本に忠実にやるしかない」と、スタンスを固めた。基本とは、ユーザーに「楽しく遊んでもらえることをしっかりお伝えする」ことだった。商品の特徴を理解してもらうという、まさに売り込みの基本である。戸津がそこにこだわったのは、スマホ版のパズドラが大ヒット商品であっても、「小学生の大半はスマホをもたないので遊んだ経験のある子どもさんは極めて少ない」という現実をしっかり見据えたからだ。

 告知活動では流通業界ともタイアップするなどして、地道に全国各地へ足を運び、そこでの声をゲームへフィードバックした。他社のプロモーション担当と意見交換もした。媒体によって打ち出すポイントを変え、親には「課金がなく安心して遊べること」を、ゲーム好きには「ゲーム性の高さ、スマホ版にはないストーリー性」を訴えた。


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