8月に開いた「Z」のプレス発表で社長の森下一喜は「100万本突破」を販売目標に掲げた。これを機に社内のベクトルも定まり、初モノずくめのこのプロジェクトは一気に全社挙げてのイベントになっていった。予約開始と同時期の9月に開かれた東京ゲームショウには、ガンホー単体の社員約300人のうち、3分の2の人が何らかのスタッフとして参画した。
スマホ版が「オワコン(終わりのコンテンツ)」と言われ始めたころの「Z」発売であり、「今更売れないのでは?」という声も多く聞かれた中でのミリオンセラーであった。
怒涛のように過ぎさっていったこの1年。戸津は「大ヒットゲームの“3DS移植版”ではないのを強調したことがヒットにつながった」と、振り返った。笑顔のなかに、困難な時こそ「基本」だということを学んだ自信もちょっぴり覗かせた。(敬称略)
(写真:井上智幸)
■メイキング オブ ヒットメーカー 戸津 幸恵(とつ・ゆきえ)さん
セールス&マーケティング部コンシューマ課
1980年生まれ
東京都北区に生まれる。幼少のころから無類のマンガ好きで、少女マンガより少年マンガを好んだ。読むだけにとどまらず、描くことにも熱中し、小学1年から中学1年あたりまで、友人と交換日記ならぬ交換マンガを創作していた。女の子が魔法を使って冒険するというストーリーであった。
中学は演劇部に所属。文化祭でピアノ演奏するなど芸術系の活動が多かった。高校では「作法が身につきそうだし、和菓子も食べられる!」と茶道部へ入部。学園祭では、演劇も披露した。
1998年(18歳)
筑波大学芸術専門学群へ進学。グラフィックデザインや心理学などについて学んだ。卒業論文は、とある玩具のデザイン変化や店頭での宣伝展開についての考察であった。
サークルは演劇部に所属。「大根役者という自覚が芽生えた」こともあり、演劇のパンフレット制作などの宣伝美術や舞台美術を担当していた。
2003年(23歳)
卒業後、大学の研究室に残り、芸術療法の研究をしながらデイケア施設でボランティアを行っていた。卒業から2年が経過するころ、東京のベンチャー広告代理店へ入社して、ゲームや映画のPRを担当した。これが「人生初のゲームとの関わり」であった。ゲームソフトメーカーでの広報・宣伝を経て、13年2月からガンホーにて働いている。「いつの間にかゲーム業界にどっぷり浸かっていた」と笑う。
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