2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月16日

危ういウォルツの立場

 これに対しウォルツは攻撃前夜になって欧州を助ける攻撃は間違いではないか、大統領はそれを理解していないのではないかと疑問を口にし、大統領に直接意見を述べられていない印象を与えた。国防長官であるヘグセスは軍事作戦検討の中心であるべきだが、何を言うべきか分からない印象を与えている。攻撃の時間など具体的作戦をあえてシェアしたのは人命を脅かす最も不適切な行動にもかかわらず、大統領はヘグセスを称え、解任を検討した形跡はない。

 一方、ウォルツの立場は危うい。トランプに批判的な著名なジャーナリストを誤って会話に招いた責任は重い。

 トランプも解任を検討したが、トランプ一期目同様政権幹部が次々と交代する混乱を避けることを優先させたといわれる。しかしトランプが国防長官指名時からヘグセスに好意的であったのに対し、ウォルツへの信頼度はもともと低いとみられる。

 ウォルツはルビオ国務長官とともに伝統的保守派に近いとみられている。同盟体制を重視し、米国は世界に関わり、世界を不安定化するロシアや中国を抑止する勢力となるべきとする考え方である。軍務歴27年で、今はウクライナに対し厳しい姿勢を取っているが、もとはウクライナ支援を強く訴えていた。

 米国は他国の戦闘に関与すべきでないとする孤立主義派、中国との戦いに集中すべきとするアジア中心主義派、そしてMAGA(Make America Great Again〈米国を再び偉大にする〉)派から見れば、ウォルツは信用できない人物なのである。

 これらを踏まえ、日本をはじめアメリカの同盟国は、政権の中枢メンバーの力関係やトランプ大統領との距離を理解しておく必要がある。

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