驚異的なコンバージョン率
・完全合法性
あまり語られていませんが、Spotify普及のポイントの一つは、完全に合法なサービスであるということです。多くのコンテンツ系のインターネットサービスは、既存の法律に対してグレーゾーンを持っています。そのため、インターネットが始まってから、ITサービスと音楽業界は軋轢の歴史を積み重ねてきました。ファイル交換ソフトに対してレコード業界が、巨額の著作権侵害賠償を求めて、法廷紛争を行ったのは、記憶に新しいでしょう。
そんな中で、peer to peerサービスの技術者のダニエル・エクは、パソコン上のキャッシュマネージメント技術を駆使して、ストリーミング方式で音楽を聴かせる方法を提案、Spotifyを設立します。違法ダウンロード対策に苦労するレコード会社から、支持を得ました。創立当初から大手4社レーベル(現在は、EMIミュージックがユニバーサルミュージックに買収されて3社)の出資が行われているところからも期待の高さがうかがえます。
・「フリーミアム」モデル
ユーザーにとっては、フリーミアムモデルが魅力です。「フリーミアム」とは「フリー+プレミアム」という意味の造語で、無料と有料のサービスを組み合わせて、有料会員を増やしていく仕組みのことです。簡単な登録をすれば、Spotifyのサービスをすぐに無料で楽しむことができます。有料会員となれば、数曲ごとに入る広告がなくなり、スマートフォンでも快適に、そしてオフラインの状態でも聴けるようになります。
注目すべきは、その驚異的なコンバージョン率の高さです。無料で試した会員の3割が有料会員に移行するという、インターネットサービスとしては、異例の数字を誇っています。
サービスを始めた各国で、着実に数字を伸ばし、母国のスウェーデンでは、成人の7割が会員という高い人気を誇っているようです。
日本で始まったストリーミングサービス、MUSIC unlimited、レコチョクbest、KKBOXなどは、お試し無料期間は設けているものの、基本的には有料サービスです。台湾、香港ではフリーミアム型で成功しているKKBOXも、有料サービスのみとなっています。レコード会社の許諾条件との兼ね合いなのでしょうが、普及の障害になってしまっているようです。