韓国とセネガルのタチウオ
資源管理ができていない漁業はみな同じ末路だという例を紹介します。韓国はタチウオの一大消費国です。下の左のグラフは韓国と西アフリカのセネガルでのタチウオの漁獲量推移を示しています。10年代に入ると韓国での漁獲量が急減しました。
そこで供給不足を補おうと、韓国は西アフリカのセネガルなどに買付拠点を求めて行きました。下の右のグラフでは、韓国の需要に応じて、セネガルでのタチウオ漁獲が急速に増えたことがわかります。筆者は13年にセネガルを訪問していますが、海岸のあちらこちらに韓国の国旗を付けた加工工場が目に付きました。
しかしながら韓国の旺盛な需要に対して漁獲が一時的に伸びたものの、そこには漁獲枠が存在しませんでした。獲れるだけ獲った方が儲かります。ところがこれでは結局数年で資源は崩壊に向かってしまいます。
一時的には大漁で潤っても資源の減少で獲れなくなってしまう。そして魚の原料がなくなった加工場は工場が回らなくなって閉鎖して雇用が失われていく。
このパターンは日本全国の水揚げ地で起きてきたのと同じ現象です。そして、獲れなくなると海水温上昇のせいだ、外国のせいだと責任転換が始まり、問題の本質が違うので何も解決せず悪化だけが進んでいく……。
欧米やオセアニアなどの資源管理が機能している国々では、こういった買付による資源の枯渇は起きにくい仕組みができています。一方でできていないと、数年は良くても資源が減って漁が成り立たなくなってしまいます。
日本が持つべき疑問と課題
23年の日本の生産量(漁業と養殖)は世界第11位と、かつての世界1位からの転落が続いています。なぜ韓国は生産量の減少が止まらない日本と対照的に増加しているのか? 世界第6位のEEZは有効に活用できていないのではないのか? なぜ韓国では養殖がこんなに伸びているのか? 漁業の制度そのものに問題はないのか? 水産業に関する国家戦略は今のままでよいのか? 様々な疑問が今、日本に突き付けられております。
スルメイカ、ハタハタ、イカナゴ、シシャモなどすでに一部手遅れ感がある魚種が出始めています。資源管理や漁業の成長戦略について、真剣に考えて行動すべきギリギリのタイミングではないでしょうか。

