排除される非MAGAたち
元USAID職員の怒り
トランプ氏の主張を支持するMAGAに対し、反対ないし、消極的な考えを持っている人たちを非MAGAという。民主党支持者および無党派層、共和党の反トランプである穏健派あるいは「良識派」の支持者も含める。
マスク氏の連邦政府職員の大量解雇については、日本でも連日ニュースになって取り上げられた。彼は海外支援の削減も強硬に進めている。その象徴的出来事が、1961年にケネディ元大統領(民主党)が設置した国際的な人道支援機関である米国際開発庁(USAID)の解体である。USAIDは、約100カ国で援助のプロジェクトを実施し、約400億ドル(約5兆9000億円)の年間予算を持つ。トランプ政権はUSAIDの職員約1万人を294人まで削減するという。
調査会社イプソスの全国世論調査(3月11~12日実施)によれば、「海外支援削減」に関して「全体」で「賛成」53%、「反対」44%であったが、共和党支持者に限ってみると「賛成」が84%まで増加し、「反対」が14%まで減少する。一方、民主党支持者は「賛成」20%、「反対」79%で、「反対」が約60ポイント上回った。民主党支持者は発展途上国における人道支援継続を強く支持している。
2月25日、筆者が首都ワシントンにあるUSAIDのオフィスに到着すると、ガラス張りの玄関の上部にある入居者表示は、すでに黒いビニール袋で覆われ、回転式ドアの両脇部分のガラスに嵌められた丸い表札プレートにも、灰色の太いテープが貼られていた。そこには1人、髪をまげに結った白人男性が閉鎖された建物の中を覗きながら、写真を撮っていた。
USAIDの元職員かと思い、声をかけると、彼は「USAIDの元契約者だ」と言い、こう続けた。
「私はアフガニスタンで医療保険のシステムを構築する仕事などをしてきたが、1月24日、解雇のメールを受け取った」
悔しさを噛み締めた表情を浮かべながら、小声でこう言うと、彼は突然右腕を捲って入れ墨を見せた。
「この一つひとつ(の正方形)が、アフガニスタンやハイチなどで亡くなった仲間だ」
一見、シールのように見えるが、握手をしているUSAIDのロゴマーク入りの彫り物であった。
解雇したマスク氏についてどう思うのかを筆者が尋ねると、彼はこう回答した。
「マスクは人道支援の重要さを全く理解していない」
この直後、感情を抑えることができなかったのか、彼は表札を覆っていた灰色のテープを剝がしてしまったのだ。彼が去ることを強要された「US Agency For International Development(米国際開発庁)」の文字が再び現れた。すると、彼の行為を見ていた警察官が即座に駆け付けたのであった……。
