MAGA化する米国
日本はどう向き合うか?
世論調査で定評があるクイニピアック大学(東部コネチカット州)が、「ロシアとウクライナのどちらの国が米国の価値観を共有するのか」と尋ねたところ、民主党支持者の88%、共和党支持者の49%が「ウクライナ」と回答し、共和党支持者が民主党支持者よりも約40ポイントも低かった。
共和党支持者の37%は「分からない」と回答した。彼らは、米国と価値観を共有する国が「ロシアかウクライナか分からない」と言うのだ。驚きではないか。
現在の共和党はMAGA化し、理念や法律よりもディール(取引)を重視する。CPACでMAGAたちを対象にウクライナ問題についてヒアリングを行うと、「民主主義の擁護」や「法の順守」といった言葉は、彼らの口から出てこない。
MAGAたちの世界では、民主主義の理念や価値観が薄れ、法が軽視され、人々はディールを重視する。もちろん、民主主義の中であっても、外交交渉となるとディールが存在する。しかし、彼らの言うディールとは、トランプ流ディールであり、その基準は経済的利益プラス私益だ。
「トランプ1.0」からトランプ氏は、「力による平和(Peace Through Strength)」を強調してきた。彼の「力」とは不動産業で養ってきたディールの力である。
しかし、「トランプ2.0」で起きているイスラエル・ガザ戦争やロシアのウクライナ侵攻で、今後、トランプ氏は自分のディールの力に限界を感じるかもしれない。ビジネスと戦争に対するディールは次元が異なることを認識する可能性がある。
米国社会のMAGA化は、日本に対する警鐘だ。民主主義を「綺麗ごと」として捉え、ディールを美化する社会が人々に安寧を保証すると考えるのは誤りだ。もちろん、これからも日米関係の強化は必須だが、日本社会は決して現在の米国におけるMAGA化に追随すべきではない。
そうした中で日本は今後、トランプ氏とどうやって向き合うべきか。「お世辞を使う」「距離を置く」「うまく転がす」などの意見が聞こえてくる。異文化的視点からみると、「人間関係VS.契約重視」の対立構図が参考になる。トランプ氏は日本人とは違い、中長期的な信頼関係の構築には価値を置かず、当面でのディールを通じた契約の締結を重視する。日本のリーダーは、ディールに対してディールで対抗する覚悟が必要だ。
ただし、繰り返しになるが、ディール最優先のMAGA化した社会は、国民に安寧を与えない。日本はトランプ氏に対してディールで応じても、現在の米国社会におけるMAGA化の価値観に倣うべきではない。
