2025年12月6日(土)

プーチンのロシア

2025年5月12日

 中南米からはブラジル、ベネズエラ、キューバの3カ国首脳がモスクワを訪れた。このうち、ブラジルのルラ・ダシルバ大統領は02年からの第一期政権からプーチン大統領と馬が合うと言われた。農業国ブラジルはロシア産の肥料に依存しており、対露制裁国にも加わっていない。ルラ氏は22年に返り咲くと、ロシア、ウクライナ双方と対話する姿勢を見せている。

 アフリカからは、エジプト、エチオピア、コンゴ共和国、ブルキナファソ、ギニアビサウ、ジンバブエ、赤道ギニアの7カ国。中東地域からはパレスチナ、オセアニア地域のパプアニューギニアの首脳が赤の広場を訪れた。

ロシアの位置づけを見せてきた戦勝記念日

 5月9日の対独戦勝記念日に訪れる外国首脳は、国際社会におけるロシアの位置づけを示してきた。特に5年ごとの節目の記念日には、ロシアと西側諸国などとの外交関係の構図が際立つイベントになった。

 戦勝55周年にあたる2000年はプーチン政権発足後ということもあり、モスクワを訪問する外国首脳は旧ソ連諸国に限られていた。ウクライナとロシアの関係もまだ良好で、レオニード・クチマ大統領も5月9日の式典に参加している。

 戦勝60周年の05年には、50カ国以上の国々の首脳や国王らが記念式典に参列している。米国からはジョージ・W・ブッシュ大統領、英国からはチャールズ皇太子、中国からは胡錦濤国家主席が出席し、20年前とはいえ、今では決して実現しないような参加国リストとなっている。

 この年には、ロシア史上初めて米国、英国、フランスなどの外国軍部隊がロシア軍とともに、軍事パレードに参加したことでも注目された。

 日本やドイツの敗戦国も招待された。5月9日が戦争の惨禍を2度と現実のものとしないよう主要国が協力し、プーチン大統領が主導して平和希求への誓いを高らかに宣言したのだ。

 これは、プーチン政権が抑圧する人権問題や政敵を弾圧する問題が西側諸国と軋轢を生みながらも、国際協調路線を明確にし、欧州諸国ともエネルギー資源供給などで密接に結びついていたことが大きい。

 この頃のプーチン政権は、核開発を進める北朝鮮に対しても、極東地域の安全保障の観点から、米国や日本とも足並みを揃えていた。

現在を象徴する2015年の顔ぶれ

 この構図が大きく変わったのは、プーチン大統領が12年に3期目の政権につき、14年にウクライナ南部のクリミア半島を併合してからだ。

 戦勝記念70周年にあたる15年には、ロシアのクリミア併合などに抗議して、米国、英国、フランス、ドイツ、日本などの西側諸国が首脳級の参加をボイコット。式典には駐ロシア大使らが出席した。

 首脳クラスの訪問国は25カ国程度と、10年前の半分に減ったが、そのかわり存在感を示したのが、

アフリカ地域のグローバルサウスの国々だ。全リストを以下のようになる。

アジア5カ国:中国、インド(大統領が出席)、北朝鮮(最高人民会議常任委員長が出席)、ベトナム、モンゴル
アフリカ3カ国:南アフリカ、エジプト、ジンバブエ
中東1カ国:パレスチナ
旧ソ連諸国8カ国:ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア(大統領)、アゼルバイジャン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン
欧州8カ国:ギリシャ、キプロス、スロベニア、スロバキア、チェコ(大統領)、セルビア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ
中南米1か国:キューバ

 中国は習主席がやはり「主賓」級でモスクワを訪れ、中国の人民解放軍が初めてロシアの軍事パレードに参加した。


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