2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年5月21日

暴力団と匿流は
どう違うのか?

 匿流や闇バイトが行う犯罪に対し、メディアや警察はよく「暴力団の資金源になるかもしれない」などとコメントを付している。実際に全国紙が「組員と匿流が一緒に犯罪を行う例があり、匿流が得た資金が暴力団へ流れているとみられる」と警察の発表を報じるものもある。事件が暴力団絡みになることでより重要度を増すと考えているのだろうか。だが、読み違えも甚だしい。

 確かに、匿流幹部の中にはヤクザ好きがいることはいるし、中には暴力団にケツ持ち(後見人)を頼んでいる幹部もいるが、両者は別物であり、ふつう人事面でも資金面でも交流はない。

 暴力団の構成員は昨年、1万人を切った。まさに、〝構造不況業種〟といってよく、売り上げも収益もメンバーもすべて史上最低レベルに落ち込んでいる。だからこそ警察庁の露木康浩長官(当時)が昨年末、「これまでの暴力団対策から匿流対策へと大きくシフトすべき転換期にある」と全国の幹部に指示したのだ。

 匿流のメンバーは、50〜80代が大半の暴力団構成員に比べ若い。IT機器にもある程度通じているし、前記したように新シノギの創建力もある。暴力団が掲げる赤の他人が盃により親子関係を結ぶ「擬制血縁関係」による上下関係を馬鹿らしく思い、学校や勤め先、暴走族時代の気軽な先輩・後輩関係の延長でシノギを続けたいと考えている。しかも、暴力団の組員より金回りがいい。

 また、組員と違い、暴力団員対策法(暴対法)や暴力団排除条例(暴排条例)の縛りがない。銀行口座もカタギ同様(というより法的にはカタギだから)自由に開設できる。世間体がよく、何食わぬ顔で子育てもできる。街角に所在なげにたむろするヤクザの組員を見て、「あーはなりたくないね」と考えている。またヤクザと付き合うと、たかられるばかりで損と考えている。こういう匿流メンバーが暴力団に接近する理由はない。

 だが、逆にヤクザからの接近はある。匿流の行う、たとえば特殊詐欺の実入りがいいと知れば、見よう見まねで自分でも始める。あるいはそれこそ闇バイトに応募してでも、「受け子」や「出し子」、集金、本部への送金役、リクルーターなどの役を請け負う。


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