2024年12月2日(月)

Wedge REPORT

2023年8月14日

 月刊誌「Wedge」で2008年7月号から連載していた『さらばリーマン』が23年8月号で幕を閉じた。筆者の溝口敦氏は同連載の前の前から『乱反射』や『転機』といった連載を創刊から続けてきた。34年にもおよぶ同じ雑誌での連載で描き続けてきたのは、社会の中で奮闘する「人」の姿だった。一区切りを終えた今、取材・執筆活動を振り返るとともに、変わりゆく日本社会やビジネス環境を生き抜く術を語ってもらった。

溝口敦が経済人を取材する意味

Q Wedgeでの連載を振り返って。

溝口敦氏によるWedgeでの連載は書籍化もされている(WEDGE)

溝口 まず、「よく30年以上も続いたもんだな」と思う。Wedgeは、ビジネス情報誌から、ビジネスオピニオン誌などと、小さな変化を積み重ねて続けてきた。それに対して、私がやってきた連載はどれも「人」に焦点を当ててきた。

 ビジネスでもオピニオンでもない。箸休めのコラムがあってもいいということだと思うが、ささやかながらそうした役割を全うさせていただいた。

Q 溝口さんと言えば、山口組をはじめとした暴力団への取材として有名です。著作としても、創価学会の池田大作名誉会長や人気占い師の細木数子氏に関するものも出している中、脱サラ起業家への取材というのはどのような位置づけでしたでしょうか?

溝口 長年、社会性の強いものを書いてきたが、その中で、人間に強く興味がある。連載で取材してきた人たちはごく普通の人たちで、悪事を起こしたわけでも人間国宝でもない。それでも、1個や2個は「面白れぇなぁ」と思うところはある。聞いていて飽きないなあということはあった。

 そうした人の面白い部分を見せながら、読者に最後まで記事を読んでもらう。その時におべっかは決して使わない。使うと読者が面白く思ってくれない。強面の人とそうでない人の違いはあまり感じることなく取材をしてきた。

Q 起業家への取材は、著作活動にどのような影響を及ぼしてきたか?

溝口 取材する相手が語る情報について、こちらが知っている情報である方が相手も話しやすい。雑学を持っていれば、一歩踏み込んだ話ができる。『さらばリーマン』では、さまざまな分野で働く人たちの経験や知識を知ることができた。それが他の取材に生きることがあった。もちろん、暴力団など裏社会の取材を通じて知ったことを『さらばリーマン』で生かすこともあった。


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