過疎地にある意外な需要
ただ一般的には、都会人が都会でアウトドアグッズを買い揃えてから登山や川・海遊びなどのアクティビティを楽しむため自然豊かな地に行くと思われる。果たして現地で購入するだろうか。そんな疑問も浮かぶが、対象はヘビーユーザーではなくもっとライトな行楽客なのかもしれない。
実はモンベルストアは、直営のほかフランチャイズなども加えると全国125店舗もある。過疎の自治体にも数多い。「過疎地にビジネスチャンスあり」と睨んでいるのだ。
また訪問客だけではなく、農林水産業従事者用のウェアや道具類の需要にも目を向けている。すでに農業用の雨具や防寒具、帽子、長靴、作業用手袋などを開発してきた。黒滝村森林組合とは、林業用ウェアやグッズの開発で協働している経緯もある。
そんな積み重ねもあっての今回の開店なのだろう。吉野路黒滝店の一角にも、チェーンソーパンツやブーツ、背負子などが並んでいた。もともと登山用に強度や使い心地などを追求して開発されたウェアや道具類は、山村住民の仕事用、いや日常用にも喜ばれるのだという。
モンベルだけではなかった。近年アウトドアメーカーなどが過疎の自治体や組織と連係協定を結び進出する例は少なくない。都市のアウトドアファンだけではなく、海や山、川のある田舎で、新たなビジネスチャンスを模索しているのだろう。
〝買い物難民〟地域こそチャンス
コンビニ店も、積極的に小規模な自治体への出店を進めている。黒滝村の隣の川上村にはヤマザキショップが2年前にオープンした。また和歌山県田辺市龍神村には昨年ローソンが出店して話題となった。
しかし、いずれも過疎地だ。経営が成り立つほど顧客がいるのだろうか。
実は過疎地では、スーパーマーケットの撤退が相次ぎ、地元の食料品店も後継者難などで廃業が続く。そのため買い物難民が増加している。車で30分以上走らないと、日々の食料品も買えない状態なのだ。
しかし高齢化が進み、車を手放す人も増えている。移動販売車に巡回してもらうなどの策も取られるが、毎日ではないし、自動車に積める分だけとなると、品揃えも多くないのが難点だ。
農林水産省によると、2020年の食料品アクセス困難人口は全国で904万人に達しており、高齢者の4人に1人が該当するという。それが理由で住み慣れた土地を離れる住民も出て、過疎が進行するという悪循環が起きている。深刻な事態が進行しているのだ。
しかしスーパーマーケットの経営には、商圏人口が4万7500~6万2500人必要とされる。また個人商店も、1店で生鮮品も含む多様な日常品を揃えるのは難しい。
それに比べてコンビニの商圏人口は、2000~3000人程度。店舗が小さいから従事者も少数で済む。また大手チェーン店ならではの物流網が整備されており、比較的低コストで商品の搬送が可能だった。
