加えてライバル店がない状態なので、結果的に顧客の囲い込みになる。コンビニは全国に5万5000店舗もあり、新規開店適地が減少している中で、新たなビジネスチャンスを過疎地に見出したのだろう。
一方で自治体側からすると、住民の生活を維持するため、よろず屋的なコンビニは非常に有り難い。買い物だけでなく、ATM利用や公共料金の支払い、宅配便の発送と受け取りなど各種サービスにも活躍する存在だ。
川上村のコンビニも訪れてみた。店の正式名称は「KAWAKAMI GATEWAY ヤマザキYショップ」。店内では焼きたてのパンを販売していた。野菜や肉など生鮮品も並ぶ。イートインコーナーもある。村の特産品としてジャムや柿の葉寿司、そしてラー油まで売っていた。
観光客が買い求めるのだろうか。もちろん地元の人もひっきりなしに訪れる。思った以上に購買力はありそうだ。
顔なじみとの会話も多く、住民の交流の場になっているようにも見えた。ただし24時間年中無休ではなく、開店は日中だけで休店日も設けている。経営は、同村出身者が代表を務める住宅資材会社の丸産業の持ち株会社となっている。
誘致すれば良いという訳でもない
過疎地に商機を見出し、また買い物困難に陥った人々の救いにもなる。こうしたビジネスは、自治体側にも出店者側にもメリットがあり、ウィンウィンの関係に見える。ただ、必ずしもすべてが上手くいくとは限らない。不協和音も起きていた。
カヌーやラフティングが盛んな高知県本山町には「アウトドアヴィレッジ本山」が6年前に開業した。コテージやレストラン、温浴施設まで備えた観光の一大拠点として開発されたものだ。モンベルが指定管理者となり、モンベルストアも設けられた。
しかし本山町の住民によると「店はいつも閑古鳥。地元の住民は誰も行きませんよ」という。町を通る幹線から離れている上、価格も割高に感じるのだという。
コテージも冬場はほとんど利用者がいない。観光客だけを対象とすると季節性ができてしまうのだ。
ストアやレストランなどの利益はモンベルに落ちるので町に恩恵がない。また指定管理料として年間2000万円以上が支払われている。一方で町には維持修繕費も必要となる。
町内に雇用を生み出し、税収も約400万円程度入るというが、従業員の半分以上が町外者で、必ずしも町の住民ばかりが雇われているわけではなさそうだ。むしろ人手不足を助長しているという声もあった。
コンビニの誘致にも、自治体が補助金を出すケースは多く、地代なども格安に設定するのが一般的だ。もともと財政基盤が貧弱な自治体が多いだけに、こうした負担とメリットが釣り合っているかどうかが問われるだろう。
それに開けば客がある程度来る立地ではないだけに、経営にも工夫が必要だろう。それを担える人材も必要だ。過疎地ビジネスは今後重要になるだろうが、舵取りも難しい。
