ドクターイエローT4編成にとって最後の検測となった、2025年1月28、29日の「ラストラン」。
その引退の際には、数多くのファンが「ありがとう」と、およそ24年間にわたり東海道・山陽新幹線の安全運行をかげながら支え続けた感謝の思いを伝え、またT4の窓には「ありがとうT4」と、T4に乗務してきた検測員たちが自ら企画した特別な装飾でラストランに花を添えました。
そうしたラストランまでのドラマ、そしてT4が駆け抜けた最後の日々を、制作中の『JR東海公式 ドクターイエロー引退記念写真集(仮)』から選りすぐった写真で振り返ります。
運転室から見たT4の「ラストラン」
2025年1月29日上り「のぞみ」検測。この日こそ、T4が検測業務に就く「ラストラン」となりました。終着駅となった東京駅に入線したT4を待ち構えていたのは、その歴史的瞬間を一目見ようと、ホームを埋め尽くす数えきれないファンの方々の姿。「この瞬間は絶対に後世に残し、みなさんへお届けしなくてはならない」。写真集の企画が発足した時からそう決意して臨んだ一枚です。
最高峰のセキュリティに守られた東海道新幹線の運転室。当日、この決定的瞬間を撮影するために、関係各所協力の元、駅入線中もその後ろの部屋から撮影する許可をもらうことができました。ガラス2枚越しでの撮影のせいか外の情景が歪んでいますが、これがどこか「引退の時を多くのファンに囲まれ、涙で滲んだT4自身の視界」のようにも思えました。
撮影時、東京駅が近づくにつれ、どんどん身体が熱ってゆくのを感じます。でも、「僕が感動するのはあとからでいい、きちんと残し、伝えるんだ」と冷静にシャッターを押し続けたのをよく覚えています。
本写真集の撮影では、貴重な瞬間を数多く写真に収めましたが、この写真は一連の中でも特段に感慨深い一枚となりました。
ファンからの愛に包まれたラストランの沿線
1月29日の昼。これから最終上り検測に臨むT4にとって、これが何度も訪れた新大阪駅で過ごす、最後のひとときでした。
いよいよ始まるラストランのJR東海区間のスタートともなる新大阪駅でT4を待ち受けていたのは、想像以上のたくさんのファン。黄色い服やドクターイエローグッズを持ち寄って、ホーム上は大賑わい。その中でも、特に印象的だったのは手作りの旗を持ってきてくれた兄弟の姿でした。後日、このお二人のお母さまにお話を伺うと、この日のために遠路はるばる新大阪駅に駆けつけたとのこと。
しかし、この賑わいはまだ序章に過ぎず、この後、東京駅まで東海道新幹線の沿線、全駅で、最後の勇姿を見守る人の姿が途切れることはありませんでした。