2025年6月17日(火)

プーチンのロシア

2025年6月3日

 同様に賠償権の放棄や、まだ完全に占領もされていないウクライナ東部、南部の4州からの撤退、ましてロシア領土としての承認は受け入れられるわけはない。

ぶれるトランプ

 プーチン氏の翻弄の前に、トランプ大統領の姿勢はぶれ続けた。

 4月末のキーウ攻撃に対し「やめろ!」とプーチン大統領に訴えたトランプ氏だが、その後プーチン氏は直接協議を呼びかけた。トランプ氏は、停戦仲介のためトルコ入りの可能性を示唆しながら中東歴訪を始めたが、結局プーチン氏は現れなかった。協議に参加しなかったプーチン氏をめぐり、トランプ氏は「私が参加しなければ彼(プーチン)が来ることはない」と主張するのが精いっぱいだった。

 トランプ氏は19日にプーチン氏と電話会談を行ったが、約2時間に及んだ電話会談の成果は極めて乏しかった。プーチン氏は即時停戦には応じない姿勢を鮮明にし、トランプ氏は会談後、記者団に対し「これは私の戦争ではない。巻き込まれるべきではなかったことに、巻き込まれてしまった」とこぼした。そこには、停戦仲介を成功させる自信は見られなかった。

 プーチン氏は、前線でロシアが攻勢をかける中、戦争をやめる考えを持っていないのは明白だ。あくまでもウクライナ全土の掌握を目指しており、その目標に向けた条件を整えることだけを念頭に、手を打ち続けている。ウクライナのNATO加盟否定も、外国軍の駐留拒否も、4州の併合も、今後の全土掌握に向けた準備に過ぎない。

激化する戦闘

 戦闘はむしろ、激しさを増している。ロシア軍はウクライナ東部ドネツク、ハルキウ、スムイ州でも新たな集落を制圧するなど占領地を広げている。プーチン氏は5月22日には、ロシア西部へのウクライナによる攻撃を防ぐために、新たに緩衝地帯を設置する考えを表明した。ウクライナ側からの防御を固めながら、さらなる攻勢をかける狙いがある。

 米国が欧州防衛に頼れない実情が鮮明になる中、欧州諸国では自衛を強化する動きも進む。ロシアと国境を接する北欧フィンランドは、4月に対人地雷禁止条約からの離脱を表明。同じくロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアでは5月、ドイツ軍による部隊駐留が始まった。ドイツ軍が自国外で駐留するのは、第二次世界大戦後初めてのことだ。

 ロシアも戦争の長期化により、軍には100万人近い規模の死傷者が出ているとされ、北朝鮮の支援を必要とするほど実態はひっ迫している。しかし、政権批判につながる国内世論を完全に封じ込めながら、プーチン政権はウクライナを追い詰めようとしている。

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