監督続投が決まった後、産経が一連の報道を最も冷静に報じていたという論評だった切り取り記事のコピーは、長嶋氏を取材したことを誇りにしてきた先輩記者にとって、どんな特ダネよりも家宝だったのだろう。
選手時代、監督時代と長嶋氏を取材してきた先輩記者は会社の中にも外にもたくさんいた。酒席でたくさんのエピソードを聞いた。みんな、長嶋さんの取材経験を懐かしみ、楽しそうな表情を浮かべていた。それこそ、悪口を聞いたことがなかった。
巨人、長嶋茂雄とあったプロ野球
長嶋さんの選手、監督時代は巨人戦が高視聴率をマークする時代だった。スポーツ新聞の一面を巨人が占めた。筆者が巨人担当だった08、09年当時も、まだスポーツ面のトップ記事を毎日のように求められた。
昭和、平成はメディアも野球ファンも、アンチを含めて巨人とともにあった。そんな巨人の象徴的存在だった長嶋さんが監督を退任して四半世紀が過ぎた現在は、取り巻く状況が随分と変わった。
「巨人一強」ではなく、12球団がそれぞれのフランチャイズに根ざす。そして、トップ選手は当たり前のようにメジャーへ移籍し、メディアの報道も野球ファンの関心も海の向こうへ大きく傾いた。
現在のスーパースター、大谷選手は世界的なヒーローとして活躍する。日本のプロ野球が長嶋さんとともにあった一つの時代が終焉を迎え、レガシーとともに新たな時代へとバトンがつながれていく。
