複合経営の実践
大原さんは経営をすでに長男(伊澄氏8代目、16年~)へと移譲しているが、いまだに現場へ出ており、農業への思いは強い。
農園はリスクを分散するために、コメ、野菜、花を組み合わせた複合経営で、それぞれ以下のような規模や販売網で経営戦略を立てている。
コメ:4.8ヘクタールのうち4.2ヘクタールが無農薬・無化学肥料栽培で、15年から残留農薬ゼロを継続。残りの0.6ヘクタールは70%減農薬・減化学肥料栽培のモチ米を契約栽培。
野菜:約1ヘクタール弱(0.6ヘクタールは借地)で里芋、ジャガイモ、サツマイモなど根菜類を中心に栽培。それらは貯蔵性があり、ネット販売、直売所、学校給食などに供給している。
花:ハウス約0.4ヘクタールでチューリップ(8万本)とオリエンタルユリ(1.1万本)の切り花を栽培。稲刈り後の期間に栽培することで、年間を通じた労働力配分を行っている。球根の高騰に対応するため自家増殖も増やしチューリップの切り花は農協(JA)に出荷している。
大原さんは、日本のコメ政策に頼らない持続可能な農業経営を追求している。コメの直売を40年前から始めており、競合相手は地元の農家ではなく、お米屋さんであり、お米屋さんを超える品質を目指している。
こうした中で始めたのが残留農薬ゼロ栽培である。15年から継続し、公的機関の検査を受けている。これにより「安全性と食味・品質の高み」を目指し、数年前から5㎏当たり3500円前後という高単価販売という付加価値を追求。当初は高すぎると言われたが、継続することで信頼を獲得し、現在は早期完売につながっている。
ただ、こうした経営戦略を練ることができている農家は地域でも一握りだという。新潟県ではコメに特化した経営が多く(8割以上)、複合経営は約1割(令和6年度新潟県の農林水産業)である。
これは積雪により冬期間の野菜栽培が困難なため、コメ単作に頼らざるを得ない地域特性がある。大原さんはハウス栽培と暖房設備への投資により、通年の花卉栽培を可能にしている。
