本当の現場が見えていない政策や報道
周辺は稲作中心地帯であり、3ヘクタール以下の小規模経営が多いが、10ヘクタールを超える経営体も増加傾向にある。しかし、どちらも経営難に直面しており、少子高齢化による離農が加速している、という。
政策や報道がこうした現場の実情を反映していないと、多くの農家が不満を感じているという。「報道やコメンテーターの多くは農業現場をあまり知らず、統計数字だけから見えることで話をしているのではないか」と大原さんは疑問を呈する。
また、ニュースなどで取り上げられる農家は「超でかい規模の人」や「非常に少数の農家」であり、「大多数の農家はそうではない」と訴える。20年の農林業センサスデータ(図3)によると、たとえば100ヘクタール以上の経営体は2000戸弱と、全経営体(約100万経営体)の1%以下である。
大原さんは、一般農家が経営を安定させるためには、自らの農業経営から判断すると5kgあたり4000円程度が必要と考える。現在のコメの高騰は「中間流通が複雑でその過程で一部の流通業者が今までより利益を得ているかもしれないが、農家の所得向上に寄与しているように思えない。米価高騰に乗じた農業機械や肥料などの便乗値上げが予想され、離農の決断を後押しすることになるのではないか」と見ている。
「平成」と「令和」の二つの米騒動、秋には多くが離農?
この地域では、今年の秋に離農を決断する農家が増える可能性があるそうだ。
その理由として、農政の転換による増産方針により、25年産米の大幅な下落が予想されており、「米作り農業に未来がなくなるのではないか」と大原さんは心配する。
今回の状況は93年(平成5年)に発生した「平成の米騒動」と似ているようだ。図5を見ると確かに現在の卸売り価格の価格帯は93年とほぼ同額で、一時的な高騰はあったが、翌年以降の豊作によって長期的に続落していった。コメの価格は、卸売り価格に流通経費などが上乗せされ、小売価格になるため、価格推移の傾向を示している。
前回は冷夏という、一時的不作という原因が明確であったが、今回は当時と異なり、農家の急激な高齢化などで供給が需要に追い付いていないなど構造的問題がありそうだ。その一方で、大手流通グループがコメの輸入を継続する可能性が高く、「国産米と輸入米のダブつきにより、コメが大暴落するのではないだろうか?」と大原さんは危惧している。



