2025年12月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月26日

 一仕事が終わって、中国は軍事政権と少数民族との間の停戦を斡旋したが、24 年6月に至って 少数民族の武装組織は、第二の都市マンダレーを目指して攻勢を再開した。8月には シャン州のラシオ(軍の北東部司令部が置かれている)を攻略する一方、マンダレーに迫った。

 中国は、軍事政権が崩壊しミャンマーがさらなる混乱に陥ることを警戒し、電気や水の供給を停止し、或る指導者を誘拐する等、彼等に圧力をかけたという。彼等は渋々進撃を諦め、去る4月22日にはラシオを撤退して軍に明け渡した。軍事政権はマンダレー防衛戦を免れることになった。

 内戦の状況にかかわらず、ラカイン州のラムリー島からマンダレー付近を通って昆明に至るガス・石油パイプラインは爆破されることなく正常に稼働している。いずれのプレーヤーも中国を怒らせたくはないということであろう。パイプライン付近が一番安全な場所だと一般市民は心得ているらしい。

年内選挙を求める中国

 以上のように、中国の覇権の下に置かれたミャンマーの将来に希望は見出し難い。この社説がいう長期的な希望としてすら、民主派勢力が軍事政権に勝つことがあるようには思えない。中国には民主派勢力や連携する少数民族が強力になり過ぎないよう掣肘を加える手段がある。

 中国は軍事政権に年内に選挙を行うよう求めており、選挙後にはミン・アウン・フラインが大統領となり制服を脱ぐことを期待しているらしい。選挙が偽りの選挙であれ何であれ、実権をミン・アウン・フラインが握り続けるのであれば、何も変わらない。

 希望が生まれ得るとすれば、現状を打破し得る彼に代わる指導者が誕生する必要があろう。それまでは、望み得るのはせいぜい凍結された紛争であろうが、それは中国が梃を有効に行使し得る状況かと思われる。

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