軍は国内ではあくまでも連邦職員や連邦資産を守ることが任務であり、移民摘発や市民を逮捕することは許されていないが、ヘグセス国防長官はこのルールですら変えようとしている。こうして反対運動を煽り、トランプは抗議運動を「反乱」と定義することで「反乱法」を適用することを狙っている。火曜日の記者からの問いに対してもロサンゼルスで見られる様子は一部反乱とみなせると述べている。
トランプの目的は抗議運動を鎮圧することではなく、乱暴な拘束や州兵を派遣することで反対運動を意図的に激化することである。そして、それを口実に移民排除をさらに強化し、民主党には治安維持能力が欠如すると主張し、州兵や連邦軍を用いて恐怖を植え付け、大統領の言動への反対を一切許さないようにすることである。
最高裁の権限も排除か
上記論説でライシュ教授が、トランプが警察国家のインフラを整備しようとしていると述べるのは大げさに聞こえるかもしれない。しかし、トランプは一期目から反乱法の施行を試みたし、トランプが独裁体制を目指しているのは否定しようがない。ライシュ教授が述べるように「防波堤」は市民の抵抗と裁判所であるが、裁判所の権限がどこまで守られるか疑問も出てきている。
トランプ関税では控訴裁や最高裁で違憲判決が出ても、その判決に従うか疑問視されており(すでにトランプ政権は連邦国際通商裁判所の判決を権限の逸脱した判事による「裁判所によるクーデター」と述べている)、さらには法律で裁判所の権限を排除しようとまでしている。
ワシントン・ポスト紙のベテラン記者キャレン・タマルティーによれば、現在上院で検討されている減税・歳出法案には「施行の制限」(Restriction on Enforcement)という条項があり、いかなる裁判所であろうとも「仮差し止め命令や仮処分命令への不遵守に対し制裁措置を強制してはならない」とあり、これは、連邦判事はその命令に背くものに対し最も厳しい刑である高額の罰金や収監といった罰則を実施することができなくなることを意味する。1000ページ以上に及ぶ減税・歳出法案の中のわずか57語のこの条項が裁判所の権限を奪うことが懸念されているのだ。
