その後、第五係は同型の機械の実験結果を経産省に提出した。同省は資料を前提とすれば、輸出規制対象に「該当すると思われる」と回答した。
この回答が、強制捜査への道を開くことになった。
功を焦り、一度決めた方針は改めない
『追跡 公安捜査』の筆者である、毎日新聞記者の遠藤浩二さんは「警察庁長官狙撃事件」と今回の「大川原化工機事件」を比較して、次のように指摘する。前者の事件は本来は警視庁刑事部が主導して捜査を進める案件であったが、当時のオウム真理教によるさまざまな事件に刑事部が手を取られたために、公安部が応援する形から主導権を握った。
「公安警察は、この30年間の間、同じ過ちを繰り返しているということだ。功(逮捕)を焦り、一度決めた方針を改めず、立件する上で都合の悪い証拠は排除し、失敗の道へと突き進んでいる」と。
「公安部は、長官狙撃事件が控訴時効を迎えた10年3月まで、一貫してオウム真理教の犯行とみて捜査を進めた。一方、刑事部捜査1課が真犯人とみていたのは教団とは全く関係のない男だった」
遠藤記者は、捜査1課が容疑者とみていた男に協力していた男性に接触して、その証言をスクープした。『追跡 公安捜査』の末尾に描いたその男性の面会録は、一読に値する決定的な証拠であることがうかがえる。
