本連載『「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟』を通じて筆者は、日本の物流の後進性を繰り返し述べてきたが、自社で輸送手段を持たず他の事業者に貨物輸送を委託するフレイトフォワーダーのデジタル化に関しては、些か異なる見方をしている。なぜなら、2016年に国際物流業務の効率化を図るデジタルフォワーダー(Shippioが商標登録)として登場したShippioの動向が注目に値すると考えているからである。
今回は、国際貿易における物流を、見積もりや予約、通関手続きといった様々な業務とその効率化から見ていきたい。
注目すべきShippioのデジタル化動向
Shippioは元々、16年6月に三井物産出身の佐藤孝徳氏が設立したサークルインが、国際市場での物流プロセスにおける通信手段や書類管理をデジタル化し、貿易業者や輸出入業者の手続きを大幅に簡素化するクラウドベースの業務支援ツールの名称であった。
一口に「国際物流業務」と言っても、その内容は複雑で多岐にわたる。船や航空、トラックなど輸送モードの選定と手配および見積もり、通関業者の手配を通じた輸出入手続き、貿易書類の管理や提出、それらすべてのスケジュールの管理、それぞれの見積書の作成・管理などだ。
こうした業務を荷主に代わって担う事業者をフレイトフォワーダーと言うのだが、その業務には手作業・目視での確認が多く、転記・記載ミス、処理漏れ、手違いなどが多々発生する。また属人的な作業が多いため、手続きや手配などの処理の品質が均一化されず、サービスレベルにばらつきが生じる傾向も強い。伝統的に荷主の不安・不満が続いてきた業務である。
こうした業界の課題を解決しようとしたのがShippioである。国際物流におけるメールや電話でのやり取り、ファクスによる書類の送受信、表計算ソフトを用いた管理をシップメント単位に一元化して関係者間で共有し、輸出入手続きや貿易取引がよりスムーズに行えるようにした。
従来の業務ごとに異なる煩雑なコミュニケーション、後に佐藤氏が「壮大な伝言ゲーム」と呼ぶことになる国際物流に関わる全ての事業者が抱える問題を解消し、業務効率の向上に繋げた。また、貨物の動静や手続きの進捗をリアルタイムで把握できる見える化も実現した。
特筆しておくべきなのは、事業開始当初から商社やメーカーの物流部門など荷主のみならず、荷主が取引しているShippio以外のフォワーダー、国際物流に関わる全ての事業者を対象にしていたことである。こうした物流にかかわる煩雑な業務を簡素化することによって、企業はそうした作業に奪われていた時間をより経営戦略的なものに配分できるような世界を構想していたのだ。
それをさらに具体的に実現すべく、他社フォワーディング案件も一元的に管理できるようにした貿易業務SaaS「Any Cargo(現Shippio Cargo)」を2023年1月に正式リリースした。
貿易業務SaaS「Any Cargo(現Shippio Cargo)」は、荷主企業が取り扱う国際輸送の案件情報全体を「Shippio」のクラウドサービス上に取り込み、本船動静の自動更新や貿易書類・情報の一元管理を可能とするサービスである。