2025年12月5日(金)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年6月25日

 そして、2024年5月に横浜市中区松陰町の旧事務所から、みなとみらいの新事務所に移転し、同年9月に井上裕史氏が新社長に就任、通関業務のデジタル化に本格的に着手した。

 社外とのコミュニケーションも、後述する「Shippio Works」を使って、簡素化を進めており 効果も出ているという。

 大きな効果を上げているのがシップメントごとのデータを集約し、タスク管理をデジタル化したことだ。それまでは、取引事業者からデータを受け取り、紙に印刷して“手板”にして通関の担当部署に渡さないと業務を進められなかった。通関の許可がおりているのに気が付かず、ピックオーダーが遅れることも度々あった。急いで書類を届けたり、ピックアップできなかったり、港に無料でコンテナを保管できるフリータイムが過ぎていたりすることもあったという。

 Shippioによる業務のデジタル化によって、案件が日付順や港別にデジタル上で整理されるようになり、ミスを減らせるようになっている。また、通関の担当者が資料をまとめた“手板”をもらわずとも仕事に取り掛かることができている。全社で情報・データが共有化されているため、タスクの属人化もなくなった。

 「これまでは、通関業務以外のことをやっている時間の方が多かった。そうした無駄やおかしさにも気づいていなかった」と村山氏は話す。

 実は、通関業務は許可などの手続きに時間がかかり、利益率が低いことが経営課題だった。それを書類のデジタル化によって効率を上げようとしたのだ。「1人が1カ月にこなす業務量を増やせれば、おのずと収益は上がる。がんばった分を賃金に還元できれば、社員のやりがいも高まり、通関業務が〝あこがれの仕事〟にもなり得る」と井上氏は語る。

 実際に、協和海運の通関申告件数は買収前の6倍以上となり、その点が評価されて、「日本DX大賞2025」の業務部門で、Shippioと協和海運がファイナリストに選出された。また、協和海運の社員のボーナスも倍以上となっているという。

物流事業者を対象とするコミュニケーションプラットフォーム

 Shippioはこうした物流業務の効率化とそれに携わる人の質の向上を「仲間づくり」をしながら進めている。24年9月、国際物流事業者向けのコミュニケーションプラットフォーム「Shippio Works」のリリースを発表した。

出所:Shippioプレスリリース「Shippio、初の国際物流事業者向けのサービス「Shippio Works」を新たに提供開始」(2024年9月4日) 写真を拡大

 この「Shippio Works」は同社の競合ともいえる国際物流事業者を対象としている。本来、プラットフォームとは、「演壇」や「舞台」、あるいは「(駅やバスの)乗降場」を指す言葉であり、「プラットフォームビジネス」とは、様々な業種の企業・事業者が1つの場で協業し、新しい商品やサービス、ソリューションなどの価値を提供することを意味している。

 多くの大手物流企業もプラットフォームと称する仕組みの構築を進めているが、その多くは差別化のための場となっている。Shippioは、「壮大な伝言ゲーム」を解消し、同社のビジョン「国際物流を、アドバンストに」を実現するために、共通の場としてプラットフォームを構築しようとしているのだ。

最後の暗黒大陸・物流 「2024年問題」に光を灯せ▶アマゾン楽天ブックスhonto

新着記事

»もっと見る