2025年12月5日(金)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年6月25日

 これまでは、Shippioの デジタルフォワーディング 利用のシップメントについてのみ、同社のクラウドサービス利用が可能であったが、「Any Cargo(現Shippio Cargo)」のリリースにより、他社フォワーディング案件についても、一元的に管理することが可能となった。

 通常、荷主企業が国際物流を手配する場合、複数のフォワーディング事業者への委託と、シップメントごとの煩雑な業務管理が発生するが、Shippio以外のフォワーディング事業者が取り扱うシップメントについても、クラウド上で一元管理し、業務効率化が実現可能としたのだ。

 同時に進行していた横浜の老舗通関業者の買収

 こうした新たなデジタルフォワーディングの提供に加えて同社は、もうひとつの取り組みを進めていた。1960年に創業した横浜の老舗通関事業者である協和海運の全株式の取得、買収を22年に実施したのである。

 デジタルフォワーディング事業の中核領域である通関業務に進出し、通関業務のデジタル化を自ら実現し、日本の国際物流のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を一層推進するためであった。 Shippioでコーポレート領域を担当していた井上裕史氏が協和海運の経営に参画した。

 井上氏は通関業務のデジタル化にはすぐには着手せず、当初有線のネット環境だった事務所にWi-Fiを飛ばすところから始めた。

 「紙、電話、メール、ファクスといった様々なコミュニケーションツールが混在しており、業務の効率化を進める下地もなく、 かつ財務状況も厳しくIT投資などできない状況だった 」と井上氏は当時の状況を語る。

 業務連絡やコミュニケーションを共有するために、デジタルツールを導入した。これまで、口頭ベースでの指示のやり取りやメールの送受信などと情報伝達が混在し、コミュニケーションの当事者しかわからない情報も多かった。それを、自分の仕事も別の人の仕事も状況が把握でき、今対応しなければならない仕事が何なのかも見えるようになったという。

 オフィスのペーパーレス化も図った。通関業務には、税関に提出するインボイスや、輸出貨物の個数や重要を記載するパッキングリスト、船積依頼書など、様々な種類の膨大な資料が必要だ。それらの資料を全て紙に出してまとめておくのが業界の慣例であった。

 Shippioの買収以前から協和海運で働いてきた輸出入課の村山僚氏は、「1回の業務で膨大な枚数の書類印刷し、担当する案件ごとに“手板”と呼ぶ書類の束を作る必要があった。1000件ほどの案件を担当していたので、毎日印刷し、紙を積み上げるのが当たり前になっていた」と振り返る。

業務の進め方が大きく変わったと語る村山氏

 オフィスのいたる所にあったプリンターを最小限にし、半ば強制的に資料をデジタル化した。会社全体が紙から脱却するには2年近くかかったが、「デジタル化できれば、ほとんど紙がなくても大丈夫なことがわかった」と村山氏は話す。固定電話機もなくした。最初の2年間で、業務の可視化と効率化に向けた基盤を整えることに集中した。


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