2025年12月5日(金)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年6月25日

 Shippioの佐藤孝徳代表取締役も、「プロダクトでコミュニティを作り、そこから業界や社会を変えていくこと、“意義のある業界再編”が狙いである」と明言している。

本当の意味での貿易のDXとは

 佐藤氏は、「Industrial Transformation」や「Digital Transformation」のTransformationという言葉が、Updateと違って、元の原型を留めないような進化・変化という意味合いがあることにこだわり、これまでの延長線上にない進化というイメージを持たせようと、この言葉を採用したと述べている。日本では、DXを標榜しながら、実際にはアナログデータをデジタルデータに変換しているだけ、良くても個別の業務・製造プロセスのデジタル化を行っているだけの企業が大多数を占める中、経営トップとしては正鵠を射た認識である。

 日本の物流の後進性につき繰り返し述べてきた筆者が、Shippioの動向が注目に値すると考えている主たる理由・背景は、この辺にあるのである。

 しかし、Shippioにも乗り越えなければならない課題はあるであろう。例えば、同社が現時点で取り扱っている事業の多くが、日本企業の日本発着の物流である点である。

 国際間物流における日本発着のシェアは、中国、韓国、台湾、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国、インド等の台頭により、年々下降している。そのような状況の中で日本発着貨物に依存し続けることには持続可能性はなく、外国企業の日本発着以外の物流中心の体制を構築することが、近い将来不可欠となるであろう。

 そうなった場合、デジタルフォワーダーとしては世界トップの米国のFlexportをはじめとする強力なライバルと相対峙することになり、プラットフォーマーとして勝ち抜いて行かねばならない。また、インターネット通信の仕組みを物流に応用し効率化を図るフィジカルインターネットをはじめとするグローバルな標準化のメガトレンドとも折り合うのか、凌駕して自らがグローバル標準となるのか、選択を迫られるであろう。

 このような課題を乗り越えていくためには、協和海運を買収したようなM&Aをグローバル且つ大規模に推進し、“意義のある業界再編”に積極的にコミットしていくことが不可欠であろう。

 あらゆる意味で、グローバルなフォワーダーのデジタル化のトレンドとShippioの動向には、今後とも注目していく必要があろう。

(bee32/gettyimages) 
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