コメの生産量はどう把握すべきか
小泉農水大臣は、6月16日、コメに関する農水省の統計調査をめぐり、その年の出来具合を表す指標となっていた「作況指数」の公表を2025年産から廃止すると発表した。統計と生産現場の実感にずれがあるとの指摘を踏まえたという。「移行期間もとらずに少々乱暴だ」との意見もあるようだが、この際は現場の実態を重視する宣言が最優先である。
「令和の米騒動」では、農水省が、「24年産米は、統計上では18万トン多くとれている。JA全農の集荷量が21万トン(最終的には23万トン)減少し、合計40万トンのコメはどこかにスタックしている」との強弁をし続けており、この数字が「政府のコメ需給計画」につながっていることから、備蓄米の放出など政府の打つ手も、遅すぎる、少なすぎる、消費者から遠過ぎるで、大混乱の元になっている。
だから、原因であるこの「政府統計」の扱いを変更する。なお、10アール当たりの収量調査は、「ふるい目幅」を現実に近づける改善を加えて継続する。
続く6月17日には、食糧法を根拠として「コメ流通7万事業者調査」を実施すると発表した。矢継ぎ早ではあるが、まずは正確な数字を把握すること、それにより価格上昇の原因を究明するのだという。食糧法第47条には、「米穀の出荷・販売事業者は農水大臣に届け出が必要」であり、52条には、「報告・立ち入り検査」、そして、調査・報告の拒否・虚偽の報告には「罰則」もある。
研究者の中には、もっと早くに法律の出動があって然るべきであったとの主張も聞いている。いずれにせよ、よりどころは数字、それも出来るだけ消費段階に近いところを掌握することが肝要である。
需給予測はどう行えばいいのか
コメの価格は誰が決め、コメの需給はどこが判断するのかに触れたい。コメ以外の農産物は、公開・公正な卸売市場などで需要者・供給者が出会い、納得のいく価格形成を経て取引されている。
もちろん、コメも市場開設者が品目指定すれば卸売市場で取り扱うことが可能だが、そのようなことにはなっていない。統制色が色濃く残り、しかも、川下消費段階からの予測ではなく、農水省が決めて関係者に示す「米穀の需給見通し・基本指針」によって決められている。
そして、「およそ政府計画や政府見通しなどというものは、必ず外れる宿命を持つもの」なのである。なぜなら、「国の計画・見通しとは、自然体ではなく意図的なもので、数字にも一定の操作・変形が加えられている」からである。
減反政策が始まった1970年代のことだったと記憶するのだが、コメの流通担当の食糧庁と減反政策担当の農蚕園芸局で生産調整(減反)の数字がまとまらなかったことがある。ギリギリの折衝で、食糧庁のとある課長が知恵を出した。
「それでは、消費拡大努力でコメの需要量が10万トン増加するということにしましょう」。これで決まった。
