インドがパキスタンと戦争になった時は、国交がないにもかかわらず、イスラエルからインドに武器が送られてきた。インドにとっての安全保障上の脅威は、中国とパキスタンだが、その両方において、イスラエル製の武器は使うことができる。特に政治的な制限はない。インドにとって、イスラエルは、長期安定的なパートナー、とみられている。
インドとは長期安定的な関係を築くべきである
こうしてみると、インドの外交は、中国とパキスタンとは長期安定的に敵対関係で、イスラエルとは長期安定的に友好関係であることがわかる。これは、インドとロシアの関係についても言え、ソ連、ロシアを通じて、インドにとって、長期安定的な関係であったことが、現在のインドの対ロシア姿勢に反映されているのだ。
そうすると、気になるのは、インドとアメリカ、そしてインドと日本の関係だろう。ちょうど7月、アメリカが日米豪印4カ国の外相をよんで、QUAD外相会議を主催する。
安倍晋三元首相亡き後、QUADにおいては、アメリカの主導権が強くなった。しかし、過去、インドとアメリカの関係は、不安定そのものといえる。
62年の印中戦争の時は、アメリカはインドを支援した。ところがその3年後、第2次印パ戦争が起きると、アメリカは印パ双方に武器禁輸を行い、印パ両国がアメリカへの信用を失い、インドはソ連へ、パキスタンは中国へ接近していった。71年の第3次印パ戦争では、アメリカはパキスタンを支援して、インドを威嚇するために空母を派遣してきた。
それ以後、ソ連が崩壊するまで、インドにとってアメリカは潜在敵国であった。92年以降、インドとアメリカの関係はよくなっていったが、98年のインドの核実験に際しては、アメリカがインドに制裁をかけて、また関係が壊れた。01年の同時多発テロで、同じイスラム過激派の被害者となった両国は関係を改善したが、インドとアメリカの信用は、まだまだ発展途上だ。
こうしてみると、アメリカがQUADを主催しても、インドは一定の距離を維持したままの付き合い方をすることになる。トランプ政権とモディ政権は、比較的関係がいいが、長期安定性の問題は、それだけでは解決できないだろう。
だからこそ、QUADが進展したのは、安倍首相の時代、つまり、日本が主導した時期に起きたことは、忘れてはならないところである。日本とインドの関係は、確かに98年のインドの核実験への制裁はあったにせよ、基本的には長期安定的に推移してきた。
原因の一つは、過去、日本がインドに関心がなく、インドの方も、日露戦争に勝った日本とか、独立の志士スバス・チャンドラ・ボーズを支援した日本、といったイメージのまま、現代まで続いてしまったことがある。それでも、長期安定的に推移してきたことは変わりがない。だから、インドと付き合う際には、アメリカに比べ、日本に有利な点がある。
日本は、この有利な点を生かすことができるだろうか。少なくとも一ついえることは、日本のインド外交は、長期安定的によくしていくことを柱に、着実に一歩一歩改善していくことが必要なことである。

