2025年12月5日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2025年7月13日

人間はなぜ、二本の足で歩けるのか

 そもそも 二本の足で立つ人間は、四本足で歩くイヌやネコよりも不安定で、横に倒れやすいという特徴を持つという。しかしながら人間は骨格や筋力を長年にわたって進化させ、効率的な二足歩行を進化させてきた。

 こうした観点から、 著者は足の持つ複雑なメカニズムについてもアプローチする。ここで印象的なのは、足は複雑な精密機器であるという認識である。衝撃を吸収し、センサーとしての役割も果たし、各種の刺激や温度などの情報を認識する役割を果たしている。

 圧力や振動、足底にかかる力の変化(傾斜など)といった機械的な刺激からの情報を脳に伝え、これに視覚などを融合させた膨大な情報を蓄積することで、僕たちの身体は倒れないようにバランスを取っている。冷たさや暖かさという温度情報を脳に伝えて体温が下がらないよう僕たちは適切に対処することができる。

「良い靴」とは

 これらの点に着目しながら、著者は足と靴から歩きの本質を解明しようと試みる。その出発点は、つま先が細い靴への違和感である。つまり、足の指が自由にならないことへの気づきである。

 歩くことに対するこれまでの一種の苦痛=著者はこれを「現代の纏足」と呼ぶ= については、 このままでいいのかという強い問題意識がある。それは自身が履きやすい靴に出会ったことであり、息子と始めた親子ハイキングで子どもが「足が痛い」と訴えたことがきっかけだった。

 以降、僕の中では、 現在の靴が何かしらの悪さをしているのだと確信したし、 かつそれは長距離を歩いたからこそ気づけたのであって、 普段の歩行距離程度ならさほど痛みを感じることなく、 長い年月をかけて じわじわと足を変形させていっているのではないか、と思うようになった。 

 そこでシューズである。普段、評者もジョギングシューズを履き、ジムでランニングをするが、シューズのかかと部分が上がっているのは当然のことだと考えていた。しかし、上がり部分がない方が、衝撃を吸収する点などで身体全体には好ましいということが本書を読むとわかる。


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