「シューズ系スタートアップ」とも呼ぶべき小規模事業者はこの点に気づき、フラットな靴底のシューズを開発し、 ユーザーの支持を得てきた。大手メーカーがひしめく市場に食い込むまで成長した企業もある。大企業ではなく新興メーカーが理想の靴を生み出すまでの開発から商品化にいたる苦労を詳しく記している部分は興味深い。
生き方全体の問題
終章のアイスランドでの息子とのロングディスタンスハイキングは、本書をしめくくるにあたって自身の実体験として目を引く。人間が自然の中で歩くことの意味を、読む者に追体験させてくれる。
本書を読み進めると、歩くことは、身体的な機能としての活動のみならず、発想や思索をも含めた生き方全体の問題として考えさせられる。読む者に、今後は意識しながら歩いてみようと思わせるとともに、優れたドキュメンタリーであることを示した点でも本書から得られる気づきは大きい。
