チベットのダライ・ラマ14世は、7月2日に「後継者は‘輪廻転生’制度で選ぶ」とのメッセージを発表した。Economist(電子版)は、それに先立つ6月26日付けで「今回の後継者選びは、中国による強制と偽情報に抵抗する、民主主義世界の意志と能力を試す試金石となる」とする解説記事を掲載している。要旨は次の通り。
90歳を目前に控えているダライ・ラマは、驚くほど健康であるが、彼に近い人々は、彼の活動ペースが鈍っていることを認めている。昨年米国で膝の手術を受けて以来、ダラムサラを離れることはほとんどない。
これは、チベットの将来を憂慮する人々、とりわけ中国およびインド政府に、繊細な疑問を提起する。彼が亡くなったら、一体何が起こるのだろうか?
チベットの伝統では、ダライ・ラマの死後、側近や高位のラマたちは幼児をその転生者と認定する。しかし、転生を拒否することもできる。また、生前に別の人間として「化身」することもできる(注:7月2日の声明で、後継者は輪廻転生の制度で選ぶと表明)。
1951年にチベットを占領した中国共産党は、次期ダライ・ラマを承認できるのは党だけだと主張している。現ダライ・ラマの逝去によって、チベットの自治拡大を求める非暴力運動への国際社会の支持が弱まることを期待しているのだ。ダライ・ラマの逝去後、中国は対抗する後継者を指名すると考えられている。
中国はおそらく、次期ダライ・ラマとして中国が選んだ人物を他国に承認させるよう圧力をかけ、チベット人が選んだ人物を支持したり接触する者を処罰するだろう。したがって、今回の後継者選びは、中国による強制と偽情報に抵抗する、民主主義世界の意志と能力を試す試金石となる。
米国の対応は不可欠だ。米国は長年、チベット人の自由拡大の要求を支持し、中国とダライ・ラマの間での協議を提唱してきた。
トランプ政権下では、議会はダライ・ラマの継承に干渉する中国当局者への制裁を認める法律を可決した。ルビオ米国務長官は3月に支援継続を表明したが、トランプ政権による予算削減により、チベット人への年間予算が約2200万ドル削減され、これは亡命政府の予算の半分以上に相当する。
