BRICSは、以前はこのようなグローバルな舞台で大見得を切るためのコストのかからない機会であったが、トランプが「BRICSの反アメリカ政策」を支持する国々に10%の追加関税を課すと脅した今、もはやそうではないかもしれない。
昨年のBRICSで盛んに語られた、世界経済の脱ドル化の推進は、その力を失った。グループにおけるインドのプレゼンスは、ますます表面的なものになっており、BRICSのレトリックに甘え続けるかもしれないが、西側諸国との防衛同盟を重視し、米国政府との貿易交渉を進めている。米国は、BRICSがチャイナ倶楽部となることを内心恐れていたのでその影響力が薄まることに不満はないだろう。
BRICSは、加盟国が増加するにつれて意味を失った主要7カ国(G7)ブロックの運命を避けるためには、グローバルガバナンスの改革など、信頼性のある問題に焦点を当てるべきである。西側主導の戦後秩序は終焉を迎えたかもしれないが、第三世界主義の時代もまた過ぎ去ったのだ。
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もはや結束はないのか
トランプの再登場により国際秩序は混乱の中にあり、全てがこれまで通りとはいかない状況となりつつある。上記の社説は、加盟国の拡大により影響力の増大が見込まれていたBRICSもむしろまとまりが無くなり逆に影響力が低下していると分析し、その存在意義を維持するためには、国際機関のガバナンス改革等、BRICSが存在意義を持つ問題に集中すべきだと論じており、それなりに妥当な分析である。しかし、その後の米国のブラジルに対する50%関税措置は露骨な内政干渉のようなもので、その影響が懸念される。
BRICSは、原加盟国の5カ国に加え、エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦、インドネシア、サウジアラビアが参加する11カ国に拡大しており、さらに将来の加盟を見据えた10カ国のパートナー国には、キューバ、ベラルーシ、ボリビアといった反米左派国家とタイ、マレーシアといった一応の民主派も含まれており、異質な国々の集合体という面がむしろ際立ちつつあるのは確かだ。
2023年のサミットでメンバーシップ拡大が決定されて以来BRICSとしての結束や意思統一が難しくなることはある程度予想されてはいたが、今回のサミットでは、BRICSの重要指導者ともいえる習近平が欠席し、また、プーチンもリモート参加であったことから、さらにインパクトが弱まった印象を与えた。
また、BRICSが目指す脱ドル化については、共通通貨構想は進展していないが、貿易決済においてそれぞれ自国通貨を使う仕組みについては、検討が進み一部実用化が開始されているが、技術的な困難さや各国の立場の違いもあり一般化するには相当な時間がかかるとみられている。
