ブラジルへの50%関税の意味
他方、トランプは、主としてこのドル離脱の動きを念頭に、サミット開催中の6日に「BRICSの反米政策」に同調する国には10%の追加関税を課すとSNSに投稿した。
これに対し、BRICSを代表して議長国のブラジルのルーラが、トランプのSNSを通じた関税脅迫を「無責任」と批判し、BRICSは反米的ではなく、公正な貿易と多国間主義を目指すとし、トランプの「皇帝」のような振る舞いは受け入れられないと主張。米国がそのような関税を課す場合には報復関税措置を示唆し、また、BRICSがドル依存からの脱却を模索する必要性を改めて強調した。
その後トランプは、9日にこのルーラの発言に対する反発の意味も込めてか、一連の相互関税に関する各国への要求書簡の中にブラジルに対してはすべての輸入品に8月1日より50%の関税を課す旨を発表し、その理由として、(1)ボルソナーロ前大統領の不当な訴追、(2)ブラジル最高裁による米国SNSへの検閲や規制、(3)米国・ブラジル貿易が互恵的とは程遠い点を上げた。
米国が毎年貿易黒字を上げているブラジルに対する50%関税は、関税を政治目的実現のための圧力の手段として利用するもので、かつ、国内裁判や司法機関によるSNS規制に対する内政干渉的な色彩が強く、ルーラとしては受け入れるわけにはいかないであろう。このままで行くと50%関税が適用されブラジルは報復措置を取ることになり、両国は今や衝突コースを歩んでいるように見える。
このような状況ではブラジルは中国との関係をさらに深めることになり、また、米国との関係を重視するインドとの交渉結果如何によっては、貿易問題に関してむしろBRICSが結束を強める可能性も排除されない。いずれにせよ多国間主義を唱道するBRICSが他のグローバルサウス諸国への求心力を強める効果を持つことになるのか、今後の展開を注目したい。

