元米国防長官のロバート・ゲーツが、米国が中国に対抗するのに必要な非軍事力をトランプは再興すべきだと、2025年6月13日付のウォールストリート・ジャーナル紙で述べている。
現在の中国との競争に立ち向かう唯一の方法は、孫子の「戦わずして敵を屈服させるのが、戦の極意である」との言葉に耳を傾けることだ。我々は、ソ連との軍事衝突を回避し、非軍事的な優位性を巧みに活用することで冷戦を勝利した。
それには、経済力、技術的優位、外交、鉄のカーテン内外での戦略的コミュニケーション、開発援助や人道支援、安全保障協力、同盟関係、そしてイデオロギーが含まれていた。ソ連は軍事的な超大国だったが、それ以外の分野、特に経済と技術では脆弱だった。さらに1950年代以降、ソ連のイデオロギーが世界で魅力を失ったことは幸運だった。
しかし今の中国は、遥かに手強く、多面的な敵だ。広範な貿易関係、サイバー能力、先端科学技術、グローバルサウスへの巧みで大規模な情報発信、一帯一路構想およびデジタルシルクロード等を有し、かつてのソ連に勝る強大な挑戦者だ。
米国は、中国との戦争回避のために、軍事的抑止力を引き続き強化しなければならない。しかし完全な勝利のためには、非軍事的手段が必要だ。
これらを所管する政府機関は種々の改革や課題の整理等を必要としていたが、トランプ政権はこれらの機関を一度解体したことにより、これら機関を再構築する機会を得た。米国の民間セクターの強みを活かし、効果的でスリムかつ説明責任のある新たな制度を構築すべきだ。
中国は軍事的、技術的に着実に力を増し、軍事産業能力は既に米国を凌駕する。巨大で発達した経済は、レアアース製錬等で代替困難なサプライチェーンを保持し、米国を人質にとる力を有する。120カ国以上(南米の全の国を含む)の最大の貿易相手国であり、一帯一路構想の下で約150カ国に援助や建設プロジェクトを展開し、60カ国以上にある100以上の港を管理・運営している。
非軍事的影響力の手段を再建する最善の方法は、既存機関を改革・再構築することだ。国務長官ルビオはその方向で取り組んでいる。
