2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月23日

 私(ゲーツ)の経験に基づく幾つかの提案は次の通りだ。

(1)開発援助プログラムは、ミレニアム・チャレンジ公社(MCC)と開発金融公社(DFC)に統合すべきだ。

(2)戦略的国際コミュニケーションは、国務省が主導すべきだ。編集の独立性と正直な報道は重要だが、これらは政府の道具であり、政策指針や国家安全保障上の優先事項に従う必要がある。

(3)近年の対中輸出規制は正しい。中国の軍備増強と技術的進歩を阻むためには、制裁や関税といった他の経済的手段も妥当だ。しかし、潜在的な同盟国に対して経済的圧力をかける手法は再考すべきだ。そうした国々と協調するほうが、中国の経済政策の変更を促すためには単独の圧力より効果的だ。

(4)グローバルサウスでの対中競争では、外交と大使館の存在が重要だ。大使館の閉鎖は誤りであり、必ず正式な大使を任命すべきだ。

(5)十分な予算を与えるべきだ。

(6)他国の内政に口を出すことは逆効果だが、特に冷戦時には、自由、人権、個人の尊厳の一貫した擁護が国益と国際的評価を高めてきた。イデオロギーは中国との競争においても重要だ。「アメリカ第一」主義が、米国の価値観を放棄することを意味してはならない。

 トランプ政権が時代遅れの制度を揺さぶったことは、米国の非軍事的手段を強化する大きな好機である。これを逃せば、既に主導権を握りつつある中国に戦場を明け渡すことになる。

 最も重要なのは、国家戦略全体(非軍事的影響力を対中競争にどう活用するかという包括的戦略)を、大統領と国務長官が議会と協力して策定することだ。もはや、時間の余裕はない。

* * *

重要なのは経済と技術

 米中央情報局(CIA)長官や共和党、民主党両政権で国防長官を務めたゲーツは、超党派で尊敬を集める人物である。そのゲーツが ウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿し、「米国は、中国との戦争回避のために軍事的抑止力を引き続き強化しなければならない。しかし完全な勝利のためには、冷戦勝利の鍵となったような非軍事的手段が必要だ」と述べる。


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