2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月23日

 非軍事的手段の分野とは、「経済力、技術的優位、外交、鉄のカーテン内外での戦略的コミュニケーション、開発援助や人道支援、安全保障協力、同盟関係、そしてイデオロギー」などである。ゲーツは、これらの分野での活動や機関の立て直し(整理・統合など)が必要だと主張し、援助機関や情報発信機関などにつき包括的提案をする。そして、「トランプ政権が時代遅れの制度を揺さぶったことは、米国の非軍事的手段を強化する大きな好機である」とも述べる。

 もっともな議論だ。非軍事的影響力強化が、特に対中競争の中で重要なことは、理解できる。

 対中競争は、総合力で決まる。もちろん、その中で、経済・技術は特別に重要である。

 ゲーツは、援助、情報発信、価値の増進などを重視する。特に援助や海外情報担当省庁の状態は由々しい事態のようだ。ゲーツは、非軍事的影響力強化につき、「国家戦略」を作るべきだと主張するのは、頷ける。

米国への信頼や魅力を回復できるか

 ゲーツは、トランプの力に期待している兆候も見せる。やや意外に感じるが、トランプの破壊力を評価するのかもしれないし、改革・再構築はむしろルビオ国務長官への期待かもしれない。

 他方、トランプが、経済の協力、自由、人権等の分野の重要性を理解できるかどうか、疑問なしとしない。トランプの言動は既に、容易に回復できないほどに、世界の米国への信頼や魅力を大きく傷つけている。

 トランプの米国は、既に中国に負けているかもしれない。今や自由貿易やグローバリゼーションを守るのは中国だと思われているとしても、驚かない。トランプは早くそれに気付いてほしいものだ。

 ルビオは7月1日、国際開発局(USAID)による対外援助活動を正式に終了したと明らかにした。米国は、これで大丈夫だろうか。早く新たな体制を築く必要がある。

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