また俺は一人暮らしになった
ネルラはいったん、気を失ったが、横たわったまま目を開けると、死んだ元フィアンセの布勢のそばを通り抜けるスニーカーと細身のジーンズとみえる誰かが、通り抜けるのを思い出したのである。
ネルラ 電気がチカチカして、誰かが歩いていた。
原田 覚えていたの?
ネルラ (布勢と)もみ合って、気を失って、そのうちあの人の後ろを……多分。
原田 第三者がいた。(布勢に)うらんでいたひとやカネを貸していたひとは……。
ネルラ 尋問しないで。警察みたいよ。
原田 君を守るためだよ。検事と被疑者じゃあない。夫と妻。
なぜ、思い出したときにいってくれなかった。話もしなくなって。
依頼者に信用されない弁護士ほどみじめなものはない。
ネルラ 弁護士なの?
原田はふたりの部屋を出て、自分のマンションに戻ることを決めた。
(「行かないで」と、いわないないんだ)
(こうして、また俺は一人暮らしになった)
大石静は、どのような結末を用意しているのだろう。
