2025年12月6日(土)

勝負の分かれ目

2025年8月8日

 23年に1軍の新スタジアム「エスコンフィールド北海道」を自前で開業させるなど、攻めの経営を行う球団の狙いは、育成と1軍との連携強化だけにとどまらない。北海道新聞の7月8日付記事では、同7日の記者会見で、球団が示したイメージ図が紹介されている。

 そこには、野球場が視界に入る場所に、北海道産の木材を使った商業施設や宿泊施設、住宅などが並ぶ。5000人収容の球場の観客席は、鎌ケ谷スタジアムからほぼ倍増。こうした戦略からは、新球場整備を起点とし、2軍をビジネスの観点からも新たな収益源に育てたい思惑が見てとれる。実際、同紙の記事でも球団幹部が事業の黒字化へ意欲なコメントが紹介されている。

 道内での球団のブランド力は強固で、エスコンフィールド北海道を中核とするFビレッジの来場者は、開業から2年強で1000万人を突破して好調に推移していることも心強いだろう。

「試合がなくても楽しめる」場所へ

 近年に誕生した日本国内のスタジアムは、プロ野球に限らず、サッカーのJリーグやプロバスケットボールのBリーグのホームとなっている長崎や広島の新スタジアムなども「にぎわい創出」の拠点となっている。Fビレッジも複合施設との相乗効果と合わせ、日本ハムの試合がある日以外もイベントを開くなど、1年を通じてファンや観光客が訪れるにぎわいぶりをみせる。

 野球場にエンターテインメントの要素を取り入れたボールパークは、試合の勝敗に左右されることなく、「応援しているチームが勝てなくても楽しめる」空間を理想としてきたが、潮流は「試合がなくても楽しめる」へと変わってきた。そのことで、地域活性化や地元への経済効果をもたらしている。

 近年はプロ野球の人気そのものが高まりをみせている。24年のセ・パ公式戦の入場者数は前年度比6%増の約2668万と、コロナ禍を経て5年ぶりに過去最多を更新した。

 04年の球界再編騒動以降に本格的に舵を切った地域密着路線が功を奏していることに加え、各リーグ3位までがプレーオフ(クライマックスシリーズ)に進出できるようになったことで“消化試合”が激減したことも要因に挙げられる。

 12球団の1軍は大都市圏に本拠地を置いているが、2軍であれば、拠点都市の人口規模はそこまで大きい必要もない。むしろ、充実した施設や高速道路などの移動アクセス、1軍との連携がしやすい距離などの条件がそろえば、球団にとっても好都合なのだ。


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