Economist誌(電子版)の7月23日付け解説記事が、投獄されている指導者アブドラ・オジャランの命により、クルド労働者党PKKが武装解除と自身の解体を決定したことにより、政府とPKKはこれまでになく和平に近づいていると報じている。要旨は次の通り。
トルコとPKK(クルド労働者党:トルコ政府はテロ組織に指定している)の間の戦争は、40年を超え、4万人の死者を数え、やっと終結に向かいつつあるように思われる。PKKは幽閉されている指導者アブドラ・オジャランの命令によりこの夏を通じて武装解除を続けると見込まれる。
議会の委員会がそのプロセスを監視するであろう。PKK指導者の幾人かの恩赦が検討されるかも知れない。
PKKが1984年にクルドの祖国の樹立を目指して武器を取って以来、トルコとPKKは和平に最も近づいている。エルドアン率いる政府は、改革にコミットする前にPKKが解散することを期待している。
エルドアンは、ほとんどのカードを手にしている。クルドの数千人の政治家と活動家が偽りのテロの罪状で投獄されている。トルコ軍の攻勢とドローン攻撃によってPKKはイラク北部の高地に押し込められている。
エルドアンは、クルドとの取引(それをエルドアンはPKKに対する勝利として売り込むであろう)が、憲法の改正あるいは前倒しの選挙を通じて、彼が権力の座にある時間の延長を可能にすることを希望している。
しかし、PKKとの和平への道筋はイスラエルの軍用機によっても整えられつつある。シリアのクルドの反乱軍に対するイスラエルの支持の申し出、およびシリアで拡大しつつあるトルコの軍事的プレゼンスに対するイスラエルの反対(トルコの支配下に入ると見られるシリアの基地に対する空襲がそれに当たる)は、トルコの政策当局者を苛立たせている。
彼らの多くは、ネタニヤフはダマスカスのイスラム原理主義の統治者だけでなくトルコに対してもPKKとそのシリアの分派を利用することを試みるだろう、と信じている。彼らは、PKKとの取引によってその脅威を食い止めることを希望している。
イスラエルがトルコを攻撃するかもしれないという恐怖はトルコの陰謀論者だけが抱いている訳ではない。ガザ、レバノン、イランの戦争を目撃し、新生シリアに対するイスラエルの敵意に注目し、エルドアンの側近の間では、イスラエルはトルコの主権を掘り崩す決意だと考えられている。
これは、デヴレト・バフチェリが、イスラエルのイラン攻撃の数日後に表明したことでもある。バフチェリはエルドアンが連立を組むMHP(民族主義者行動党)の党首であり、PKKに対する政府のアウトリーチの立案者である。「トルコが究極の目標なのだ」と彼は嘆く。
