2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月21日

 ますます多くのトルコ人がこれに同意のようである。最近のPewの世論調査によれば、43%がイスラエルを最大の脅威としている(米国が30%、ロシアが2%)。

 オジャランも同様の見解である。トルコに対する代理戦争にYPGの参加を得るべくイスラエルはその努力を倍加させて来たと、この春、刑務所でクルドの議員との会談の際、彼は主張した。漏洩した会談の記録によれば、自分だけがそのようなシナリオを阻止出来る、とオジャランは述べた。

 このところ、この地域を消耗させる混乱のお陰で、クルドの自治の名において戦争を戦うためにマルクス主義を掲げた男(オジャラン)と、彼を縛り首にすべきだとかつて要求したナショナリストの扇動者バフチェリが、突如として和平のパートナーとなったのである。

*   *   *

エルドアンの動機

 この記事によれば、トルコ政府とPKKの間の和平は手の届くところに来ているようである。和平が達成されれば、PKKの暴力と軍の焦土作戦で荒廃した南東部の成長を可能にするであろう。

 政府は多大な財政負担を強いられて来た。死者は4万人を超えるという。和平が成れば、クルドに一定の自治が認められることになるのかも知れない。

 和平はシリアのクルド勢力YPGとダマスカスの新政府との間の緊張関係を緩和する効果も持ち得るのかも知れない。また、トルコの西側との関係改善に資することは間違いない。

 ここに至るまでの過程は透明性を欠いているが、おおよそ次のようなことである。昨年10月22日、エルドアンと連立を組むMHP(民族主義の極右政党)のバフチェリが、オジャランが議会でPKKの解体を宣言することが認められるべきで、その見返りに、オジャランの釈放もあり得るとの趣旨を発言した。この発言をエルドアンは歴史的機会の窓を開くものとして支持を表明したことから考えて、背後でエルドアンの意思が働いていたに違いない。

 その後、水面下で交渉が行われたのであろうが、2月27日、オジャランと面会したクルド系のDEM(人民平等民主党)の代表団は、PKKが党大会を開き、武装解除と解体を決定することを要請し、自身がこの要請に歴史的責任を負うとするオジャランの書簡を公表した。5月12日、PKKは党大会を開き、「歴史的使命」は達成されたとして武装闘争の終結を宣言した。そして、7月11日には、PKKが本拠を置くイラク北部の山岳地帯の洞窟の外で攻撃用ライフルを大釜で燃やす儀式を行ったのである。


新着記事

»もっと見る