2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月21日

 PKKが武装解除の第一歩を踏み出したことを受けて、エルドアンは7月12日の演説で、「歴史の新たなページ」が開かれた、「トルコは勝利した、トルコ人・クルド人・アラブ人、8600万の市民すべてが勝利した」と言明したが、エルドアンの動機はどこにあるのか?

 世上ではエルドアンが芳しくない支持率回復のためのギャンブルに出たとの評がある。彼の目標は2028年の選挙での大統領3選にあり、3選を禁ずる憲法改正に必要な議会の3分の2の多数を得るために、クルド系のDEMの抱き込みを狙ったものだとの見方が広く行われている。

 上記の記事は、アサド後のシリアを舞台とするイスラエルとの対立関係が大きな要因として作用したことを強く示唆している。上記の記事によれば、オジャランはトルコのために彼にしか出来ない役割を果たし得ると主張しているらしい。

和平プロセスは円滑に進行するのか

 この和平プロセスが分かり辛い主たる要因は、これまでのところPKKの一方的な譲歩が先行している様子であり、PKKが見返りに政府から何を獲得したのかが明らかでないことである。

 クルドに対する隠された約束の可能性は排除されないが、クルドの政治的・文化的権利の保証など、見返りのないまま、PKKが武装解除と解体に応じたのはどういうことか? そこまで、PKKは追い込まれているのだろうか?

 他方、去る3月、エルドアンは、28年の大統領選挙で最大の脅威となるイスタンブール市長のイマモールを、腐敗を理由に投獄したが、PKKやDEMなどクルドは、このようなエルドアンの強権的な政治を見て見ぬ振りして取引するつもりなのかという問題もある。和平は歓迎であるが、この夏を通じて武装解除が滞りなく進行し、和平プロセスが円滑に進行するのか、なお注目の要がありそうである。

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