このように、今や世界ITビジネスの代表格ともなった「GAFA」をはじめとするビジネス・リーダーたちが、直接・間接的に移民ファミリーの家系で占められていること自体、21世紀の米国にとって、いかに移民が重要な存在になっているかを示す動かしがたい証左ともいえよう。
さらに移民は今日、IT分野のみならず、米国経済・社会の多くの分野においても、ますます大きな役割を果たしつつある。
底辺で支えるスタートアップ企業従事者の23.6%、看護婦の15.9%、介護・福祉士の28.4%、タクシー運転手の56.5%、農業労働者の64.7%を占めており、米国の対国内総生産(GDP)貢献度も高まる一方だ。
トランプが講じた移民の〝制限〟
ところが、トランプ政権は、「治安対策強化」などを理由に、さまざまな移民制限措置を打ち出してきた。
まず、大統領が第一弾として去る1月20日就任式当日の夜に発表したのが、入国ビザ切れなど外国人不法滞在者の一斉摘発と国外退去命令だった。検挙を徹底させるために、国境警備隊、移民局監視官など要員1万人超を増員、「1日当たり1500人、年間100万人摘発」の目標まで掲げた。
バイデン前政権も国内世論の圧力を受け、任期後半に不法滞在摘発に乗り出したが、実際に退去させたのは、2年余りで25万人程度だった。トランプ政権の「毎年100万人」との差は歴然たるものがある。
またこの関連で、去る4月には、正式な入国手続きを経ないまま農場などで働く中南米からの季節労働者98万人に対し、「即時国外退去命令」を出し、応じない場合、「将来的に永久入国禁止」とする通達を出した。
国外退去措置と並行する形で、難民受け入れについても厳しい規制をかけ始めており、すでにキューバ、ハイチ、ニカラグア、ベネズエラ、アフガニスタン、スーダン、カメルーンなどの一部諸国からの「難民申請プログラム」について、「米国がテロの温床になる危険がある」として即時打ち切りを発表した。
これまで憲法で保障された「出生地主義」に基づき、米国内での出生児に対し賦与されてきた市民権についても、トランプ政権は制限措置を発表、社会的に大きな波紋を広げており、訴訟もあいついでいる。
世界各国からの留学生受け入れについても、逆風が吹き始めている。
米国務省は去る5月末、全在外米大使館・領事館に対し、米国留学のための学生ビザ申請審査を一時停止するよう通達を出した。数週間後には、すでに審査手続きを開始している学生についてはこの対象から除外されることになったが、新規の申請受付はその後も凍結状態が続いている。
また、米国各大学に在学する留学生についても、思想傾向や日常の行動に関する動向調査が開始されており、すでに各州約120校で1500~1800人もの留学生が国外退去勧告処分を受けたと伝えられる。この中には、過激な発言や政治活動とは無縁で、たんなる交通違反、駐車違反摘発者なども含まれるという。
