2026年1月20日(火)

日本の医療は誰のものか

2025年8月23日

総合診療科は器用貧乏と言われてしまった

Cさん 27歳・男性
総合診療医 地方病院勤務

 幼少期に小児喘息を患っており、その時の小児科の先生がいつも優しく診てくれたことで、いわゆる「町のお医者さん」に憧れるようになった。
 大学で対話を重視する総合診療科の存在を知り、自分が理想とする医師像に近いと感じた。だが、大学3年で専攻を決める時期に、「総合診療医として地域で働きたい」と伝えると、上の先生たちから「まずは臓器別の専門性を獲得すべき。最初から総合診療医になると、どれも中途半端で、〝器用貧乏〟になる」とそろって否定された。大学の授業も臓器別の専門医がそれぞれの専門について授業をするため、地域医療の机上での学びは薄い。私自身は師に出会って総合診療医を目指す決意が固まったが、科の選択において周囲の影響は少なからずあるのではないだろうか。

直美が許される社会、この先に待っていること

Dさん 31歳・女性
美容外科 都内クリニック勤務

 テレビドラマの影響で外科医に憧れ、研修後、都内の大学病院にある乳腺外科に入局した。女性に寄り添うことができる仕事は好きだったが、当直などの特殊な勤務形態は拘束時間も長く、想像以上に心身への負担が大きかった。さらに、大学病院の給与はかなり薄給で、休日も外来や当直バイトで収入を補填することが常態化していた。
 体力の限界を感じ、別の方法で女性に寄り添える美容外科への転向を考えたが、当時、美容外科は医師として〝邪道〟だった。今も、ずっと後ろめたさはあるし、その分、保険診療領域で頑張る同僚を尊敬もしている。今は保険診療科を全く経験しない〝直美〟が許容される世の中。美容が市民権を得たというよりは、このままでは、「稼ぐために医師になる人」が増えるのではないかと危機感がある。

ーー

 若者のライフスタイルが多様化し、個々の選択が尊重される時代となった。こうした環境下において医師の偏在を是正するには、かつての“赤ひげ”像に象徴される自己犠牲を前提とした価値観を理想としていては限界がある。医師が志を保ちつつ持続的に職務を果たせる環境をいかに設計するか。制度の構造的課題を丁寧に解きほぐし、実効性あるインセンティブを備えた仕組みを構築することこそ、これからの日本の医療を維持する鍵となるだろう。

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