2025年12月6日(土)

Wedge OPINION

2025年8月26日

 このような韓国の変化の淵源にあるのは、兵器輸出だろう。韓国は1970年代から防衛産業の拡充を図り、保守・進歩の別なく、防衛産業を輸出産業として育成してきた。

 2010年から20年にかけては年平均30億ドルで推移してきたが、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった22年には173億ドルに達し、23年も約140億ドルと高水準を維持した。ちなみに、24年の輸出額は約200億ドル(2.9兆円)に設定されている。

 韓国の防衛産業が急成長した背景には、ロシアによるウクライナ侵攻がある。ポーランドは保有していた旧ソ連製兵器をウクライナに供与し、その戦力を埋めるために戦車や自走砲の需要が生じた。韓国は大統領によるトップセールスと、価格・納期・品質で契約を勝ち取った。ポーランドとの契約額は1次輸出が137億ドル、2次輸出が65億で計200億ドルを超える。

生まれてきた外交的な余裕

 しかし、兵器輸出の意義は金額だけで語れるものではない。韓国の兵器輸出の成功は、単なる経済効果を超えた意味を持っている。

 第一に、韓国のK2戦車は欧米で初めて採用されたアジア製主力戦車となり、K9自走砲は世界標準の自走砲となった。自国兵器が外国で採用されると、その国との間に同盟関係に準じた戦略的パートナーシップが生まれる。実際、ポーランドとは兵器輸出を契機に、防衛産業協力から経済協力、外交協調へと関係が多層化している。

韓国の戦車が欧州各国に広がりつつある(Mirko Kuzmanovic/gettyimages)

 第二に、兵器輸出国としての地位確立は、韓国の外交的選択肢を大幅に拡大させた。韓国は今や、米中対立の狭間で「選択を迫られる国」ではなく「選択できる国」となりつつあり、兵器輸出で構築したネットワークは、韓国が国際問題で独自の立場をとる際の「外交的資産」として機能している。

 第三に、国際社会での客観的な地位向上は、韓国の外交エリートや国民の自己認識に変化をもたらした。「常に大国の顔色をうかがわなければならない小国」から「独自の価値を提供できる中堅国家」への意識転換が起きている。これが、従来の「被害者意識」や「劣等感」に基づく対日強硬論から、「対等なパートナー」としての対日協調論への転換を可能にしている心理的基盤となっている。

 筆者は毎週、Wedge ONLINEで韓国軍の機関紙「国防日報」のレビューを書いているが、4月以降だけでも、ポーランドやルーマニア、カナダ、インドネシア、フィリピンなど10か国以上が韓国で兵器の操作訓練を受けたり、K2戦車など兵器を視察したりしている。このような事実からも、筆者の考察が的外れでないことはわかるだろう。


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