2025年12月5日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年9月2日

 ところが日本では官業を挙げて掲載提案に猛反発している。業界団体でつくる「全日本持続的養鰻機構」は今年6月、元水産庁次長が新会長に就任し体制強化を図ったが、その総会の席上、来賓として出席した水産庁担当者は「政府全体として、掲載提案阻止に向けてあらゆる取り組みをしている」と表明(日本養殖新聞2025年6月15日)、日本養鰻漁業協同組合の代表も7月、「官民一体となって阻止に向かって行動する」と宣言している。

トレーサビリティの確保を

 先述したとおり、附属書Ⅱへの掲載は、禁輸を意味してはいない。絶滅の危機に瀕しておらず、合法に取得されたものであれば、問題なく輸出入は可能である。

 掲載されれば、素性の分からない中国産アメリカウナギの蒲焼きや台湾経由の密輸三角貿易ウナギの排除にむしろ資するであろう。ならば持続的なウナギの利用を願う我が国としては、附属書掲載に対して積極的に賛成を各国に働きかけることこそ、中長期的な利益に繋がり得よう。

 これに関して国内的には、水産物のトレーサビリティを担保するため「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律(水産流通適正化法)」が20年に公布、22年12月に施行されている。実はウナギ稚魚の国内流通に関しては25年12月から規制の対象とすることが決まっている。これにより、ウナギ稚魚には漁獲番号が付され、流通に際してその番号の伝達が義務付けられることとなっている。

 同法では違法な採捕が行われている恐れの大きい魚種を指定し、当該指定魚種の輸入に際しては合法に採捕したことを示す外国政府発行の証明書等を付すことを義務付ける制度を設けている。ワシントン条約の附属書Ⅱ掲載種に関する規制と類似した内容である。

 ところが、ウナギ稚魚については密輸三角貿易の実態があれほど関係者間で知れ渡っているにもかかわらず、指定魚種から外されている。「供給量が減り、産業が成り立たなくなる」という業界からの反発が、その理由の一つだ(井田徹治「ウナギの資源保護 不透明な漁獲・取引が横行」中国新聞2021年7月31日)。

 もし水産庁や業界があくまでワシントン条約の附属書掲載に反対するというのであれば、ここは輸入するウナギについても同法の適用対象とする旨予め宣言するべきではないだろうか。併せて、「デコイ」と化している「非公式協議」を活性化させ、正式な会議体とするとともに、実効的な規制を行う旨表明すべきではないだろうか。

 このように宣言した上で、「我が国としては国内的にも地域的にも、ウナギを持続可能に利用するための制度を直ちに整備するつもりである。まずこちらで実効的な規制を行いたい」と各国の理解を得るのである。

 奈良時代の歌人・大伴家持が「夏痩せに良し」と万葉集に詠んだウナギ。そのウナギを持続可能な形で今後も将来世代にわたって永く利用するためには、実効的な制度の下でトレーサビリティを担保する必要がある。

 わが国は法治国家であり、非合法由来のウナギは、当然のことながら一切排除すべきである。ワシントン条約や水産流通適正化法での適用対象指定を通じた輸出入規制は、その一助となるべきである。

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